【日本医業経営コンサルタント協会福井県支部 支部長 杉原博司】
2016年度診療報酬改定後、地域包括ケア病棟を導入する病院像が具体的になってきました。それは大規模病院よりも中小病院、急性期から回復期までをカバーしている病院です。地方に目を向ければ高齢化が進み、慢性期疾患の患者が増えています。こうした状況に対応した病棟と言えるでしょう。その機能はポストアキュート、サブアキュートだけでなく、アキュートやレスパイトまでを広くカバーし、地域医療を支えています。「25年以降の主役たる医療は、地域包括ケア病棟にある」と言っても過言ではないと私は感じています。
地域医療の中心的役割を果たしていく地域包括ケア病棟を導入した、あるいはこれから導入するという病院にとって、安定した収入確保と同時に安定した運用が課題です。前回(「導入より運用が難しい地域包括ケア病棟」)は出来高病院における包括入院料への対策について触れました。出来高病院では、濃厚診療=収入増という状況にありますが、いつまでもその収入構造が続くとは考えられません。来るべき“包括入院料時代”に備える上でも、地域包括ケア病棟の導入は良い機会かもしれません。
最終回は、「地域包括ケア病棟の運用 総括ポイント」の残る3点を見ていきます。
地域包括ケア病棟の運用 総括ポイント
1)高い包括入院料は本当にコストを賄えているのか?
2)私たちは私たちの現場を理解しているか?
3)急性期と回復期の線引きはない
4)地域包括ケア病棟はみんなで育てていく
■私たちは私たちの現場を理解しているか?
地域包括ケア病棟の運用は、A)ポストアキュートが主体 B)ポストアキュートとサブアキュートが併存 C)サブアキュート(アキュートを含む)が主体-の3つのタイプに分けられます。病棟運用にはそれぞれに特徴的な課題も、共通する課題もあります。これらの課題と解決策について全職員が理解しなければ、現場の不満や部署間の衝突が起きる要因となります。
課題例:転棟タイミング
特に、自院の急性期病床からのポストアキュート受け入れの場合は転棟タイミングが重要です。病院によって異なるとは思いますが、
・DPC対象病院の場合には入院期間IIへの移行時期
・1日入院単価が3万円を下回る日
-を転棟の目安と考えている病院が多いようです。
理想を言えば「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)が低く、1日入院単価が3万円を下回る患者に優先順位をつけて転棟させたいところですが、リハビリを1日3単位以上実施する予定がある、複数診療科を受け持つ地域包括ケア病棟では不安があるなどの理由で、タイミングを逃してしまうケースが生じてしまいます。部署間できちんと協議し、看護必要度の低い患者、リハビリの収入、ケアスキルを総合的に勘案することが大事です。
(残り2136字 / 全3309字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】