非小細胞肺がんの患者を5万人と推計すると、年間の薬剤費は1兆7500億円に達する―。昨年春の財務省の審議会で、日赤医療センター化学療法科の国頭英夫部長はこう指摘し、オプジーボ(一般名ニボルマブ)の薬価引き下げの端緒を開いた。だが、これについて日本総研の西沢和彦主席研究員は、「保険者側からの問題提起があってもよかった」と話し、医療費の“番人”としてのチェック機能を強化する必要性を示す。【聞き手・構成=敦賀陽平】
国頭先生の問題提起に端を発し、「薬価が高過ぎる」との批判が相次いだことで、オプジーボの薬価は最終的に半額まで下がった。引き下げそのものには賛成の立場だが、値引き率には科学的な根拠がなく、まるでバナナのたたき売りのような印象を受ける。これも、薬価の決め方が不透明なことに関係している。
非小細胞肺がんに適応が広がった際、中医協(中央社会保険医療協議会)で議論しなかったことも問題だ。市場規模の拡大に伴い、オプジーボの対象患者が増えることを、資料に基づいて話し合っていれば、今回の事態は起こらなかったかもしれない。関係者間の合意に向け、十分な資料を提示し、議論を促す意識が厚生労働省に欠けていたのではないか。
●第1回
医療機関の説明責任も問われる(CB)
ニボルマブ50%引き下げは妥当か(MT)
●第2回
高い原価率…製薬企業は透明性の確保を(CB)
費用効果の鍵握るバイオマーカー(MT)
●第3回
健康増進だけが「保険者機能」じゃない(CB)
免疫CP阻害薬の現状と展望(MT)
●第4回
高額療養費、患者は“コスト意識”を(CB)
C型肝炎治療薬は高額でも費用効果良好(MT)
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