バイオ・ラッドラボラトリーズは来月1日、国内で初めて、デング熱の確定診断に用いるデングウイルスの検査キットの販売を始める。このキットは、中央社会保険医療協議会(中医協)が同日付での保険適用を認めているが、救命救急入院料を届け出ているなど集中的な治療ができる医療機関で、入院を要する重症患者に限って算定できる。感染症の専門家らは初の保険適用を歓迎しているが、「算定可能範囲が狭過ぎる」といった声も出ている。【丸山紀一朗】
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この検査薬の商品名は「プラテリアデングNS1Agキット」。血清中のデングウイルスNS1抗原を感染初期に検出可能で、約90分で結果が判明する。27日に開かれた中医協で、2330円の保険償還価格が認められている。
デング熱が疑われる人が検査対象となるが、▽救命救急入院料1-4▽特定集中治療室管理料1-4▽ハイケアユニット入院医療管理料1または2▽小児特定集中治療室管理料-のいずれかを届け出ている医療機関で、入院を要する重い症状のケースに限って算定を認めるとする条件が付けられた。積極的疫学調査を目的として使用した場合は算定できない。
デング熱はこれまで、年間200人程度の海外渡航者による国外感染例が発生するにとどまっていたが、昨年は国内感染例も160人以上確認された。デング熱の確定診断をする場合、医療機関内で研究用の検査などができなければ、国立感染症研究所や地方衛生研究所などにウイルス学的検査を依頼する必要があり、結果の判明までに時間を要していたが、医療機関がこのキットを使えば保険診療の中でスムーズに診断できるようになる。
今年もデング熱の国内感染例が相次いだ場合、感染を疑って医療機関にかかる人が増えるとみられるため、厚生労働省の担当者は、「昨年のような国民の関心の高まりを想定すると、保険の中で診られる検査ツールが出てくることは重要な意味がある」としている。
一方で、29日に開かれた厚生科学審議会感染症部会では、前田秀雄委員(東京都福祉保健局技監)が、「保険適用範囲は重症な方に限定されているし、算定できる医療機関は救命救急に近いところだけだ」とし、デング熱の発生を早期に把握するためには、広く一般の医療機関で保険適用の検査ができる方が望ましいと指摘。岡部信彦委員(川崎市健康安全研究所長)は、軽症者も含めて使えるようにすべきと考えていたとし、今回の保険適用範囲について「残念だ」と述べた。
さらに、小森貴委員(日本医師会常任理事)は、「保険適用されたことは喜ばしいが、厳しい縛りができたことは基本的に経済的な問題」と分析。今後の動向などを見た上で、感染症部会として「こういう保険適用でいいのかどうかということを、(厚労省)保険局、中医協に提言をするということがあっていい」と述べた。
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