【日本福祉介護総研株式会社代表取締役・学校法人美芸学園理事 石郡英一】
介護施設における看護師の役割には、前回紹介した「病への支援」のほかに、もう一つ「意欲への支援」がある。
人がこの世に生まれてきた時、初めに行うのは息を吸うことである。逆に、臨終の時、人が最後に行うのは息を吐くことである。「息」とは「自分の心」と書く。少々哲学的になるが、私はこの「息」をすなわち「欲」だととらえている。
つまり、人はこの世に生を受けた時から死ぬ時まで欲を吸い続ける。生まれた時に食欲、排泄欲、睡眠欲を吸い込み、成長するに従って、活動欲、物欲、金銭欲、性欲、愛情欲、出世欲、名誉欲など、ありとあらゆる欲を吸って生きるようになる。欲がなくなると人は死にたくなるか廃人となる。だから、人は死ぬまで欲を吸わなければ生きていけない。そして最後に欲を吐いて死ぬことから、仏になるといわれているような気がする。
意欲を支援していくには、これらの欲をご入居者にお持ちいただかなければならない。しかし、現在多くの介護施設で行われている、当たり前と思われているケアではそれがかなわない。なぜならそれらの行為が、実はご入居者の欲を奪っているからである。
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