西アフリカにおけるエボラ出血熱の拡大や、デング熱の国内感染を受け、日本政府は感染症対策の拡充や防疫体制の改善を迫られている。エボラ出血熱の疑似症患者が検疫の網をくぐり抜けて地元の診療所を受診したり、デング熱の患者が約70年ぶりに国内で見つかったりするなど、海外からの「輸入症例」を防ぐには、水際対策だけでは不十分であることが露呈した。こうした感染症の脅威にどう備えるべきか。医療機関や患者移送における課題を探った。【新井哉】
勤務前に個人防護具の着脱トレーニングを行うほか、最初の1週間は経験者と一緒に勤務する―。エボラ出血熱の流行国のリベリアに派遣されていた国立国際医療研究センターの加藤康幸医師は、11月に開催された日本ウイルス学会学術集会で、現地のエボラ治療ユニット(35床)の例を挙げ、抗マラリア薬や抗菌薬の投与、点滴などの基本的な治療だけしか行われていない実情を明らかにした。
加藤医師は、3月16日の夜勤帯に現地の医療関係者が感染したとみられる事例を説明。看護助手の男性は吐物、便に素手で触れた可能性があり、同28日に発症。看護師の男性も静脈路確保の際に顔面に血液を浴び、4月1日に発症したという。
日本国内では当初、「アフリカに比べて日本の医療体制は整っているから感染は拡大しない」「検疫体制を強化すれば、水際で防げるはずだ」といった“楽観論”を支持する行政・医療関係者が少なくなかった。しかし、日本とほぼ同じ水準の医療体制の米国内で、医療関係者の二次感染が相次いだことから、日本国内における防護体制などを再検討せざるを得なくなった。
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