厚生労働省は4日、社会保障審議会福祉部会(部会長=田中滋・慶大名誉教授)に、社会福祉法人の経営組織に関する制度改正の考え方を示した。考え方では、社会福祉法人の運営の公益性を保つため、現行制度では任意となっている評議員会の設置を義務付けた上で、理事などの選任・解任や報酬の決定といった議決権を持たせるなど、その権限を強化することが示されている。【ただ正芳】
「社会福祉法人の役割、ますます重く」―規制改革会議・岡議長インタビュー(下)
【解説】再燃・社福の内部留保
この日、厚労省は、同部会で検討する社会福祉法人に関する論点として、▽経営組織▽業務運営・財務運営▽運営の透明性の確保▽法人の連携・協働など▽行政の関与▽他制度における社会福祉法人の位置付け―などを提示。経営組織については、現状の課題や制度改正に関する考え方も示した。 ■理事や理事長の権限・義務の明確化を求める 厚労省が示した考え方では、現行法令で定められていない理事長や理事の義務や責任などを法令上で明記すべきと指摘。さらに、理事会については法人の業務執行に関する意思決定機関と位置付けた上で、理事の職務執行の監督や理事長の選定・解職などの権限を持たせるよう、法で定めるべきとしている。 理事や理事長については、特別背任罪や贈収賄罪が適用されるよう、制度改正すべきと提案。理事の定数については、現行運用上の要件である「6人以上」を法令上に明記すべきとした。 ■評議員と理事の兼職の禁止なども
現在は任意設置の諮問機関として位置付けられている評議員会については、「理事・理事長に対するけん制機能が不十分」と指摘。理事や監事、会計監査人の報酬や選任・解任といった重要事項を決定する議決機関とした上で、法令上で設置を義務付けることを提案。また、評議員と理事の兼職や、理事や理事会による評議員の選任・解任などについては、禁止すべきとした。 さらに監事の選任・解任についても、評議員会の議決事項とすべきと提案。監事の定数については、法令上で2人以上とし、財務会計および社会福祉事業に精通する者を選任すべきとしている。そのほか、一定規模以上の法人に対しては、会計監査人による監査を受けることを義務付けることも提案された。 この日の議論では、特に評議員会の在り方について、委員の間で意見が分かれた。藤野興一委員(全国社会福祉協議会全国児童養護施設協議会会長)は、1施設だけを運営する法人も多いことから、評議員会の設置義務化には一定の経過措置が必要と指摘。橘文也委員(日本知的障害者福祉協会会長)は、評議員会に議決権を持たせることで法人運営の機動性が損なわれる恐れがあるとし、慎重な対応を求めた。一方、松山幸弘委員(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)や藤井賢一郎委員(上智大准教授)は、評議員会への議決権付与の必要性や設置の義務化の必要性を強調。松山委員は、小規模法人に評議員会の設置を促進する試案として、複数の法人が評議員会や監事を共有する仕組みを提案した。
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