【株式会社AIPコンサルタンツ 医業経営コンサルタント・防災士 浜田晴香】
前回、役に立つ災害対策ができているかの阻害要因として「正常化の偏見」からくるリアリティーの欠如を指摘した。「早速、リアルな想像を働かせて自院の災害対策を見直してみたが、結果として特に足りないものはなかった」という頼もしい声が聞こえてきそうだ。あるいは、「リアルに想像してみたけれど、やはり何から優先して手を付けるべきか分からなかった」という声もあるかもしれない。
そこで、おすすめしたいのが「リアル防災訓練」だ。
「防災訓練なら、消防署に協力してもらって、メーカーも立ち会いの下、定期的に実施している。何を今さら?」と思われるかもしれない。確かに防災訓練は、どこの病院でも何かしら実施していることと思う。
館内放送を通じて地震の発生と避難指示が報じられる昔ながらの避難訓練から、患者役に特殊メイクを施す凝った訓練まで、その内容もさまざまだろう。トリアージ訓練、消火訓練、エレベーター救出訓練、透析患者の離脱訓練など、どれも必要な訓練だ。災害時に威力を発揮する機器の操作方法も、定期的に訓練で確認しておく必要がある。
しかし、私はこう問いたい。「それは本当に院内の誰にとってもリアルな訓練ですか? 担当者にとってだけのリアル訓練になっていませんか?」と。誤解のないようにしたいが、こうした訓練が間違っていると言っているのではない。担当者が使い方を知らない、担当部署が動けないのはそもそも問題外であるため、当然必要な訓練である。
(次回の記事配信は3月6日15:00を予定しています)
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