中央社会保険医療協議会(中医協)の「入院医療等の調査・評価分科会」は16日、2012年度診療報酬改定の影響を調べるために行った調査の結果(速報値)を基に、各論の議論を始めた。14年度報酬改定に向け、分科会としての考えを取りまとめて総会に報告する。今回のテーマは、看護配置7対1一般病棟入院基本料の平均在院日数などで、14年度報酬改定でも引き続き平均在院日数の要件を厳しくすべきだとの意見が出された一方、慎重論も聞かれた。
12年度の報酬改定では、平均在院日数が「19日以内」から「18日以内」に短縮されるなど、7対1一般病棟入院基本料の算定要件が厳しくなった。ただ、新たな要件を満たせなくなった施設でも、10対1の要件を満たしていれば、14年3月末までは引き続き7対1を算定できる経過措置が設けられている。
調査結果などから、厚生労働省が課題に挙げたのは、▽平均在院日数が長い病院は病床規模が小さく、手術件数が少ない傾向がある▽平均在院日数が短い病院は病床規模が小さく、専門病院が多い上、短期間で退院可能な手術や検査が多い傾向がある―など。
調査結果によると、7対1一般病棟入院基本料を算定する病院のうち、平均在院日数が特に長い病院では、一般病床の平均病床数が234.2床で、その他の病院の294.4床に比べて少なかった。また、手術の実施件数は184.2件で、その他の病院の236.2件に比べて少なかった。
一方、平均在院日数が特に短い病院について、DPCデータを基に厚労省で分析したところ、DPC算定病床数は平均177床で、その他の病院の平均303床より少なかった。また、特定のMDC(主要診断群)の患者が入院患者の40%以上を占める専門病院が過半数を占めた。
さらに、平均在院日数が3日以内のDPCが占める割合が多かった。このようなDPCの内訳としては、小腸・大腸の良性疾患のポリープ切除術や前立腺針生検などが目的の入院が多かった。
また厚労省では、「介護施設などから入棟する患者は疾患の種類が限られており、手術や検査などの実施が少ない傾向がある」ことも課題に挙げた。
調査結果によると、介護施設などから7対1病棟に入棟した患者が全体に占める割合は2.9%。介護施設などから入院した患者の特徴としては、▽主な病名を見ると、「肺炎」「骨折」「その他の消化器系の疾患」「脳梗塞」「その他の心疾患」「その他の腎尿路系の疾患」が上位6疾患で、これらで全体の半数以上を占める▽ほかの場所からの入棟患者に比べ、手術・検査の実施率が低い―などがあった。
こうした調査結果について高智英太郎委員(健康保険組合連合会理事)は、7対1一般病棟入院基本料を算定していながら平均在院日数が長い病院には、中小規模の施設が多いことが読み取れるとして、「7対1の看護配置が必要な急性期医療を提供しているのか、検証が必要だ」と主張した。
これに対し神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は、「入院期間が長い、介護施設からの入棟が多いといった中小病院の7対1の特徴が出てきたが、これが良い、悪いではなく、そういう患者像を扱う病院とそうでない病院があるとご理解いただきたい」と反論。「単に入院期間や介護施設からの受け入れ割合で7対1病院の一部を排除することはやめていただきたい」と訴えた。
石川広己委員(日本医師会常任理事)は、「7対1の平均在院日数(短縮)の議論は、地域によっては限界になっている」と述べ、さらなる短縮をけん制。「地域では7対1(病院)の存在意義が相当ある。入院日数を縛ると、地域医療の崩壊につながる」との懸念を示した。
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