新型コロナウイルス感染症への対応を通して、職員同士の協力体制が強固なものになったと話す、武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市、611床)の泉並木院長。診療科に特化しないコロナチームを組んで、全職員が力を合わせたことで絆が深まったという。泉院長と同院の経営アドバイザーを務める井上貴裕氏(千葉大学医学部附属病院・副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長)が、病院長のリーダーシップや経営について対談した。【編集、齋藤栄子】
対談は3月22日、オンラインで実施。泉並木院長・武蔵野赤十字病院(左)、井上貴裕氏・千葉大学医学部附属病院・副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長
井上(以下、敬称略):新型コロナウイルス感染症の治療を通じて感じたことは。
泉:病院の中の風通しがよくなり、皆が仲良くなったメリットは大きい。呼吸器科や感染症科など限られた所に任せるのではなく、病院全体で取り組まなければいけないと初期の段階で判断し、耳鼻科も、整形外科も、外科も、皆が入ったコロナチームを作った。行政や保健所、医師会などから次々と情報が来て混乱したので、内分泌代謝科の部長が責任者となり、看護部の副部長と事務が連携して「COVID‐19センター」を作り、行政からの情報整備や、宿泊施設へ移るための民間の救急車手配など窓口を一本化して、関与する医師と看護師、事務職を決めて助け合った。
毎朝5分間だけ、代表の25人くらいが集まって、入院患者数や保健所の指示などを一気に情報共有する。励まし合い、戦友のような関係になれたことが非常に大きい。コロナ対応で赤字にはなったが、その後しっかり救急入院を受け入れようと数字への意識も皆に芽生えて、病院のために働く意識の一本化ができた。
2005年に保険診療委員長として、当院へのDPC導入に関与した。大学病院だけがDPCをやっていた時代で幾つかの大学病院を見学して、「これはやらなければ駄目だ」と申し上げて、大学以外で最初に導入したケースになった。DPCは、やっていることを評価されるシステムだ。
院長になった当初は、病院が黒字になるか赤字になるかも分からなかった。井上先生にベンチマークで立ち位置を客観的に示していただいたのが自信になったし、急性期病院の割には手術件数が少ないという弱みも分かった。DPCは自分たちの強みや弱み、どういう立ち位置にいるか数値でしっかり分かる。病院運営にとても参考になる。最終的にはDPCの係数を上げて加算が取れる仕組みを作るために、目標とする数値をいかに現場に落とし込むかだ。
井上:外科も以前より強くなってきたと感じる。優秀な医師のリクルートに成功している印象。
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