【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
去る3月31日、厚生労働省から「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」の一部改正について介護保険最新情報Vol.958が発出された。制度施行以来、居宅サービス計画の標準様式について軽微な変更はあったが、記載要領も含めた改正は実質的に初めてのことである。この改正によって、法定研修、保険者の実地指導やケアプラン点検の指導・指摘事項は一層具体化されていくだろう。
そう考えれば、この事務連絡は居宅介護支援事業所の管理者や経営者にとって必見と言える。その影響力を物語るように、この事務連絡を巡っては関係者によるSNS上の書き込み等、一時的に議論がにぎわいを見せたと聞く。ところがその内容の中には、この改正の意図を理解していないものも少なからずあるようだ。そこで今回は、この記載要領の改正内容を確認していく。
最初に言いたいことは、この改正は、内容からみれば「変更」ではない。ケアマネジメントの専門職が、これまで現に行ってきた思考過程や実践を明記するよう、諭旨しているにすぎない。もしこれを「変更」、あるいは「新しいことを要求されている」と感じるなら、ケアマネジメントにおいて必要とされてきた思考過程や実践過程を行っていなかった可能性がある。自分の実践を振り返る良い機会だと認識した方がよいだろう。
繰り返しになるが、書かれている内容を表層的な記載事項としてのみ捉えた人には、「新しいことを要求されている」ように見え、適切な実行プロセスを体感している人にとっては「これまで通りだ」という捉え方になる。
ケアマネジメントは今日、改めてその本質が問われている。その中において、例えば今回の記載要領に対する反応を見ても、実践者や関係者の質は二極化しているように感じる。これまでなら「完璧な記録ができる」と言えば、実地指導対策を要領よく行える、というイメージだったかもしれないが、それはもう過去のことだ。今後は、意図的な実践であるのかどうか、行動の意識化と「書く」レベルは比例していく。思考過程の意識化、再現力の高さが、良い記録の前提となる。
2021年度介護保険制度改正により、介護保険施設や介護サービス事業所に「科学的介護」が求められた。「科学」はプロセスの適切さ、再現性が問われる。利用者に個別性があるのは言うまでもないし、大切にしなければならない。だからといって、利用者への支援の根拠が、担当者の個別的な判断に委ねられてよいわけではない。
今回の記載要領はケアマネジメントの質の証明を求めている。思考過程と判断、その結果である行動のプロセスは、同職種や他職種など第三者からの検証を可能とするものでなければならないし、それが専門職としての責任の一つである。計画作成を担うケアマネジャーの頭の中で、行う判断が感覚的レベルにとどまり、言語化、さらには再言語化できないなら、到底他の職種に伝えることすらできない。
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