【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 学科長・教授 京極真】
Q 医師と看護師の間で、ささいな出来事から口論に発展したのが始まりです。その後も、ミーティングなどで何度かトラブルが発生しました。さらに今回は、医師が看護師の怠慢を激しく非難しました。それを見た他の看護師たちが、医師に対する報復で非協力的態度を示すようになりました。信念対立の激化にはどう対応したらいいでしょうか。
激化した信念対立への対応は、とても難しい問題です。まずはそのメカニズムを理解し、管理者自身のストレスマネジメントを行った上で、目的達成を意識した対応に切り替えましょう。また、管理者の責任として、時には構造的な変化を引き起こす必要があります。
■信念対立のエスカレーションとは?
信念対立のエスカレーションは、意見の相違に対して攻撃したり、報復したりすることによって生じます。エスカレーションは信念対立への対処法の1つであり、信念対立によって生じるフラストレーション、ストレス、抑うつなどの心的反応とは異なるものです。これは信念対立が激化するプロセスを表しており、多職種連携の質の悪化に、密接に関係しています。
信念対立は、いきなり激化することはありません。上記の例で言えば、「ささいな口論」から始まっていますが、以前に比べて重い対処を重ねるうちに敵意が増幅していき、ついには多職種連携を阻害するところまで発展しています。このように、エスカレーションは、時間をかけて徐々に進行していき、しきい値を超えると手に負えなくなります。
また、この問題は一方的なものと、双方向的なものがあります。例えば、一方的なエスカレーションは、意見の対立がきっかけで、一方の当事者のみが情緒不安定になって怒鳴りだすようなケースが含まれます。他方、
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