【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 学科長・教授 京極真】
Q スタッフ同士の仲が悪く、管理職を介してしかコミュニケーションを取ろうとしません。例えば、AさんがBさんのやり方に不満を持った場合、管理職の私にクレームを入れて、Bさんに伝えるように求めてきます。伝言ゲームのようになって、さらなる食い違いが生じると困りますから、言いたいことがあれば当人同士でやりとりするよう伝えています。しかし「話が通じないから」と言ってやりたがりません。どう対応したらいいでしょうか。
コミュニケーションの回避はよくある対応ですが、多くの場合で問題の先送りにしかなりません。ビジョンを共有し、信念対立をマネジメントする方法を浸透させていきましょう。
■信念対立の回避はよくある話だけれども…
信念対立で最もよく採用される対策は「回避」です。例えば、仲が悪い相手とのコミュニケーションを避けたり、意見が対立した時に見て見ぬふりをしたり、苦手な相手に職務上伝えるべきことを伝えなかったり、不快な場面で沈黙したりすることが、この回避に該当します。上記のAさんはBさんとの仲が悪く、言うべきことがあっても上司を介しているわけで、これは立派な回避戦略です。
回避は、信念対立が重大な結果を引き起こさないと予見される、「時間が経過すれば自然に解決しそう」「自分が対応しなくても誰かが代わりにやってくれる見込みがある」などの場合において、妥当な戦略になり得ます。例えば、Aさんの場合は、管理職のあなたが対応してくれると予想して、Bさんに対する不満を伝えていますから、Aさん自身にとっておおむね妥当な戦略と言えるでしょう。
厄介なのは、Aさんにとって妥当な戦略であることと、多職種連携にとって妥当な戦略は同じではない、という点です。上記の事例で言えば、Aさんが回避戦略を採用しても、「スタッフ同士の仲が悪い」という職場文化は変わっていません。つまり、チームメンバーの間で生じる信念対立そのものについて言えば、問題を先送りしているだけで対策になっていないのです。局所的な「最適解」は、必ずしも大局的な最適解ではありません。
では、どうしたらいいでしょうか。
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