医師の働き方改革が進む中、タスクシフトの好事例として名前が挙がる東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)。周術期におけるタスクシフトで多職種が協働した結果、予定手術件数が増加し、高齢な患者の割合が増えたにもかかわらず、平均在院日数が5年間で約3日短くなるなど診療成績を向上させた。同院の院長補佐で、周術期センター長を兼務する落合亮一教授に、周術期センター創設の経緯と成果について聞いた。【齋藤栄子】
厚生労働省「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフティングに関するヒアリング」19年7月17日 日本麻酔科学会提出資料
■周術期センター開設までの歩み
大森病院は2003年当時、麻酔科医がゼロになるという危機的状況に陥ったことから、同院へ招かれた落合教授が唯一の麻酔科医として再建に当たった。しかし、医師が一人でできることは限られるため、落合教授は「多職種の力を借りる」という新たな視点から麻酔科の診療内容を見直した。周術期管理に必要な診療環境を整理していくと、看護師をはじめ、病院の全職種と協働する環境を新たに整備することが必要という結論にたどり着いた。
一方で、日本麻酔科学会の認定施設を対象とした「麻酔関連偶発症例調査」から、心停止や死亡などの重大な偶発症の原因を整理すると、もともと並存していた慢性疾患に関係するものが全体の約3分の2を占めていて、手術や麻酔に直接関連する事故は、むしろ少ないことが分かった。これらの結果から、手術入院する前に慢性疾患の治療を済ませ、改善した状態で手術の予定を組む、新しいリスク管理の在り方を構築する必要があると落合教授は考えた。
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