2025年が迫り、地域医療構想は新たなフェーズを迎えている。個々の病院が「急性期」としてどう生き残るかを模索する中、調整会議などでは、どの病院にどの機能を託すかは引き続き難しい議論になるだろう。
対談では、厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」の尾形裕也座長(九州大学名誉教授)と、井上貴裕氏(千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長)が、病床機能報告の「急性期」をどう定義するか、地域医療構想と診療報酬はどのように結び付いていくかなどを話し合った。【司会・構成、大戸豊】
井上氏(左)と尾形氏
司会 地域医療構想の進捗は地域差が大きいと感じる。
尾形 それぞれの医療機関が機能を自主的に選択し、地域の必要病床数に収斂させるような手法を取った理由を、原点に立ち返って考えてほしい。
社会保障審議会医療部会では以前、機能分化を進めるには、もう少し強制力が必要ではといった意見があった。しかし、日本医師会をはじめ医療関係者は、わが国は民間医療機関が圧倒的に多いのだから、自分たちで機能を選び、在るべき姿にしていきたいと訴えた。このような提案は評価すべきだし、ぜひ成功させるべきだろう。
地域医療構想の議論は、消費税の増税分をどのように医療・介護に充てるかから出発している。重要なポイントは、社会保障・税一体改革で示された「医療・介護に係る長期推計」(11年6月)の試算では、医療・介護の費用は「現状投影シナリオ」よりも「改革シナリオ」の方が高く、その分を消費税で賄うという話だった。医療費削減でなく、プラスを見込んでいるから、医療関係者は賛同し、地域医療構想を進めていこうといったはずだ。
医療・介護に係る長期推計 クリックで拡大
内閣官房「医療・介護に係る長期推計」資料より
司会 病床機能報告でも「急性期」を選択する病院が多いが、病床を減らすわけではない?
尾形 誤解があるが、一般病床は、15年度の病床機能報告(89.6万床)と比べて25年の推計(90.7万床)では多少増えている。必要病床数の算定もある意味、現状維持的だ。
高度急性期や急性期の病床数が過大で、「回復期」が少ないといわれるが、「急性期か? 回復期か?」の二者択一なら、多くは急性期を選ぶ。その最大の要因は、病床機能から「亜急性期」をなくしたことだと思っている。
井上 地域医療構想で「回復期」を選んだ場合、入院料とどうリンクするのか。回復期リハビリテーション病棟入院料もしくは地域包括ケア病棟入院料を選ぶのか。
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