【北海道介護福祉道場あかい花代表 菊地雅洋】
福祉医療機構は、2017年度の通所介護の経営状況についてのレポートを公表したが(平成29年度 通所介護事業所の経営状況について)、地域密着型通所介護については45.5%が赤字だという。
翌年の18年4月の報酬改定では、地域密着型通所介護費の単価はアップしたが、それによって経営は改善されただろうか。むしろ、地域密着型通所介護のままずっと経営していけるという見通しは甘過ぎるのではないか。
地域密着型通所介護の定員上限はわずか18人で、保険収入も18人の介護給付費以上は得られない。そのような事業だけでは、職員の定期昇給を行っていく中で、収益が頭打ちになるのは当然だ。介護報酬改定のたびに地域密着型通所介護の報酬が必ずアップするなら話は別だが、それは期待できないし、高騰する人件費を賄うだけの報酬を得るには、定員18人のままでいいと考えるのには無理がある。
介護保険制度の開始当初は、地域密着型通所介護という分類はなかったが、小規模型通所介護という形で事業を立ち上げても、経営が成り立った。それは、通所介護の1時間当たりの単価が特別養護老人ホームの時間単価よりも高く、夜勤業務を伴わない通所介護には人材が集まり、人件費コストも今よりずっと低かったためだ。特養と比べて高い給付費と安い運営コストのおかげで、小規模型通所介護の保険給付だけで長期的に収益を上げられたし、競合する通所介護事業所の数も少なく、利用者確保も容易で、事業規模の拡大も今よりずっと簡単であった。
しかし、介護事業経営実態調査等で高い収益を上げる通所介護事業所が多いことが明らかになるにつれ、「もうけ過ぎだ」という批判が浴びせられた。それが逆風となって単価がどんどん下げられ、現在は簡単に収益が上げられなくなっている。しかも財務省は、18年度介護報酬改定で地域密着型通所介護費がプラス改定になったことに相当おかんむりのようで、財源が厳しい状況でコストパフォーマンスが低い事業はなくなってもよいと、介護事業の大規模化を誘導している。
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次回配信は8月29日5:00を予定しています
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