【横浜市立大大学院国際マネジメント研究科 准教授 黒木淳】
本講座では、病院経営のために院内データをどのように分析し、活用していくのかについて連載を配信する。今回は初回ということで、本講座の背景・目的と全体のハイライトについて、自己紹介を絡めて話したい。
医療・福祉分野の経営と私が出合ったのは、前期博士課程・後期博士課程の大学院生として所属していた大阪市立大大学院経営学研究科において、医療・福祉業界のさまざまな人とお話しする機会があったことによる。当時は何について話されているか十分に理解できたわけではないが、現場の人々が持つ課題意識について率直に感銘を受けた。
■会計情報などのデータ活用で医学・経営連携を摸索
私が専門とする「会計」とは、情報利用者が何らかの事柄を判断するに当たり、それを支援するために経済的情報を識別し、測定し、伝達するプロセスのことである。会計は、ともすれば金銭的な数字をどのように測定するのかについての議論に終始してしまいがちだが、大学院生時代でのコミュニケーションから、会計情報などのデータをうまく使うことによって、組織を大きく動かすことのできる可能性を感じることができた。
横浜市立大の教員に赴任してからは、医学部との接点を多く持つことができた。「医学・経営連携」を進めるという大学の方針の下で、多彩なエビデンスに基づき診療行為を行う医師に対して、経営学・会計学などの社会科学の見地から、どのような連携ができるのかについて模索するチャンスをいただいた。
私が具体的に実行したのは、院内データの分析と活用によって院内のコミュニケーションを活性化させることであり、コミュニケーションのためには分かりやすく、使い手の判断に関連し、信頼できる情報をつくり出すことが必要であった。
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