【株式会社ニューハンプシャーMC 代表取締役 柴田雄一】
■病院はなぜマーケティングを嫌がるのか?
「経験に勝るものなし」
意味は読んで字のごとくですが、この言葉は「学問なき経験は、経験なき学問に勝る」という英国の諺(ことわざ)の意訳とされています。さらに、この「経験」が学問(先人がつくり上げた知識)と融合すれば、目的に至る確率は高まるでしょう。ただし、この“経験”の捉え方がずれてしまえば、確率はむしろ下がると思います。
例えば、過去の成功体験(経験)に固執し、環境の変化に気付かず、知識のアップデートも気に留めないような場合です。
「マーケティング」などは、利益を追求する企業が活用するものといったイメージが強いためか、非営利性や公益性を求められる医療機関では、導入するのをためらっていたのかもしれません。そもそも競争がなかった良き時代には、マーケティングに頼る必要もありませんでした。
しかし、経営環境が変化する中、他業種と比べて利益率が低いのに、医療機関でのマーケティングの取り組みは、まだまだ遅れています。
「医療でもうけてはならない」という考えが根底にあったり、医療広告規制の存在も少なからず影響しているでしょう。さらに、“過去の成功体験”が大きいようにも思えます。
「周囲の目も気になるので、医療機関は大っぴらにマーケティング(集患)を行ってはならない」
「当院では“地盤・看板”で、患者は自然と集まってくる」
「高齢者はスマホも持っていないし、ネットも利用しない。デジタルマーケティングは関係ない」
果たして、そうでしょうか? 少なくとも私のクライアント先の経営者は、そのようには思っていません。だからといって、商売にだけ偏っているわけでもありません。患者に最適な医療を提供するための原資を確保するため、患者と地域医療を守り、職員を守るための手段の一つとして、マーケティングを捉えています。知識をアップデートし、さまざまな経験を通じて、変化に対応しています。
経験を積む上では、ある程度の失敗は織り込む必要がありますが、大きな失敗はできないので、経営者としては、失敗する確率を下げていく必要があります。
筆者の柴田雄一氏が、6月14日(金)18:30から東京・浜松町で、CBnewsセミナー「手術・検査件数や病床稼働を増やす次の手 ―地域医療連携活動だけに頼らないデジタル・マーケティングの導入―」を開催します。ご参加をお待ちしております。
■患者の受診行動を知る3つのフレームワーク
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