【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
■中核病院なら、一般外来の縮小は必須
医療政策では、病院、特に地域の拠点施設ならば入院に特化し、かかりつけ医機能としての一般外来は診療所等と連携し、専門外来に注力するという方向性が示されている。私はこの考え方に強く賛同しており、急性期の中核病院として診療密度の高い患者に集中するには、一般外来を縮小することが必須と考えている。
理由は、たとえ外来診療単価が2万円を超える施設でも、再診患者の4分の1程度は診療単価が1500円未満で、経済的な採算性という点で疑問が残るためだ。さらに臓器別の専門医が外来診療の多くを担っている場合、自らの専門医領域は責任を持った診断が行われていても、その他の領域になると、放射線科から画像診断のレポートで重要疾患を疑う指摘があるような場合でも、自らのこととは考えずにスルーしてしまうことがあり、医療事故の温床になり得る。一方で患者は医師ならば、専門に関係なく診療できると思っている場合もあり、「お医者様に診てもらっているのだから安心だ」といった誤解が生じ、期待のギャップが生じてしまうこともある。
顔の見える関係が築ける開業医等にかかりつけ医機能はお願いした方が医療安全という観点でも妥当だろうし、誰も傷つかないのではないか。開業医は様子がおかしいと思えば、精査ができる医療機関に患者を紹介する。そこから専門性を遺憾なく発揮するのが中核病院の役割である。
さらに働き方改革が叫ばれる今日、医師にとって当直の次に負担が重い外来業務を縮小することは重要だ。外来では医師が自ら行うタスクが多い。もちろん医師事務作業補助者の有効活用などの視点は重要だが、大量に患者が押し寄せれば、限界はある。「外来が延びたから手術が遅れた」などの事態は避けたいものだ。
ところが、病院経営層は別の考えを持っていることも多い。「外来収入は、病院収入の2-3割を占めている。外来診療単価が1万-2万円もあれば無視できない」と捉えられがちだし、人件費は固定費なのだから、外来で稼ごうという議論すら行われたりする。また、外来患者が減れば、新入院患者も減少すると考える(実際、再診の長期処方をするような一般外来患者が入院する確率は低い)。いずれも残念な発想だと思うが、このような考え方の行き着く先は土曜日外来であり、いまだに続けている中核病院がある。今回は土曜日外来について言及する。
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次回配信は5月13日5:00の予定です
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