【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2016年度診療報酬改定では、ポリファーマシー対策として、薬剤総合評価調整加算と薬剤総合評価調整管理料が新設された。6種類以上の内服薬が処方されている患者に対し、処方の内容を総合的に評価、調整し、内服薬を2種類減薬した場合、評価されるようになった。
高齢者への多剤投与は肉体的にも経済的にも負担であり、当然ながら医療費の高騰につながる。さらに、転倒の原因にもなるなど、不要な投与があるとすれば、それをやめない理由はないだろう。そもそも何の薬を飲んでいるか分からない状況の患者も少なくないはずだし、薬を飲んですらいないかもしれない。各医療機関で積極的に取り組むため、“ポリファーマシー解消に向けた加算”が設けられたのには社会的な意義がある。
薬剤総合評価調整加算 250点(退院時に1回)
2.外来受診時又は在宅医療受診時において6種類以上の内服薬(頓用薬及び服用を開始して4週間以内の薬剤は除く)を処方されていた外来患者又は在宅患者について、複数の薬剤の投与により期待される効果と副作用の可能性等について総合的に評価を行い、処方内容を検討した結果、受診時に2種類以上減少した場合の評価が行われた。
薬剤総合評価調整管理料 250点(月1回に限り)
連携管理加算 50点
薬剤師に関連する評価は、薬剤管理指導料の取得、無菌製剤処理料、病棟薬剤業務実施加算などがあり、それらに並ぶ評価を業界も歓迎しただろう。ただ、病院の算定状況は惨憺たるものだ。
グラフは、「処方あり」の入院患者に占める薬剤総合評価調整加算の算定率だ。最大で6%強で、ゼロの病院が多い(なお、算定実績が多い病院は、地域包括ケア病棟を持つなど在院日数が長い傾向があり、実績ゼロの病院は急性期病院が多い)。
グラフ 「処方あり」入院患者に占める薬剤総合評価調整加算の算定率
これは、患者に最善の医療を提供しようとする医療機関の姿として適切だろうか。せっかく診療報酬が付いたのに残念だ。過去には算定実績が少ないという理由で廃止された報酬も存在する。
今回は、これだけの社会的意義があるにもかかわらず、薬剤総合評価調整加算・管理料の取得が進まない理由を整理し、今後のあり方について言及する。
(残り2406字 / 全3516字)
次回配信は3月18日5:00の予定です
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】