【福島県立医科大学附属病院 病院経営課 副課長 中村孝】
少子・高齢化や人口減少に伴って、疾病構造は変化しています。前回、「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)や病床機能報告制度などを考慮すると、これから自院の病床を何床維持し、どの方向に進むべきかを選択すべき時期を迎えているとお伝えしました。
今回は、どれくらいの病床を維持すべきか、シミュレーションもしながら考えてみたいと思います。
■急性期病院における内部環境の変化
今後、急性期病院では、人に関して以下のような変化が考えられます。
(1)医師の働き方改革が進められ、スタッフの就業時間が変わる
(2)(1)の働き方改革と並行し、タスクシフティング・タスクシェアリングが普及する
(3)患者層等が変化し、看護配置を7対1から10対1などにシフトするケースが増える
(4)(3)の看護配置の変化で、看護師数も変化する(維持もしくは減少)
さらに、少子・高齢化で疾病構造も変わり、患者数は高度急性期・急性期だけでなく、全体的に減っていきます。このような流れに合わせ、国も地域医療構想などを通じ、急性期病床の「適正化」を進めています。
適正化は、看護必要度のハードルを上げたり、病床機能報告制度を通じて進められています。高度急性期、急性期の病床が減れば、病院の収入が落ちるほか、看護師に余剰が生じてきます。看護師等の給与費比率が高まれば、病院は市場拡大を進めるか、病床をダウンサイズするのか、選択を迫られます。
大きな流れの中でも、病院で可能なこともあります。
(1)市場拡大が見込める地域では、周囲の医療機関と病床機能のすみ分けをしつつ、患者を集める
(2)新規入院患者を確保し、看護必要度を維持する(手術患者が増えると、看護必要度が上がる傾向にあり、手術件数を増やしたい)
(3)三次医療圏の外から患者を集め、新規入院患者の維持・拡大を目指す(強みのある診療科、患者を集められる医師、特色のある治療法などが必要)
(4)一般病床を減らしても、特定集中治療室管理料やハイケアユニット入院医療管理料の病床を増やし、入院単価をアップする(看護師数の維持にもつながる)
(5)適切な医療を行い、各管理料や指導料を算定する
できる対策から進めていくしかありません。人口が減っていく中、これまでのように「増収・増益」は困難でしょう。ただ、売り上げは伸ばせなくても、利益率をアップさせ、「減収・増益」を目指すことが重要です。
そのためにも、事務職は、治療実績を管理しながら、診療単価を上げていく必要があります。
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