【医療法人嘉健会 思温病院 理事長 狭間研至】
■中小薬局の社長が感じた、病院運営がうまくいかない理由
新たに運営に参画することになった病院では、まず、実際に医師として診療活動に従事していく中で、ソフト・ハードとシステムを知るという、いわば「病院を知る」ことから取り組んでまいりました。しかし、今どきの病院は勝手に患者が押し寄せて来てくださるわけではなく、放っておくとがらがらの病院になってしまいます。特に当院は、経営母体が変わる(=売りに出る)ことになった病院ですので、当然ながら収支バランスが大きく崩れていたわけです。身売りせざるを得ないぐらいに収支が崩れるというのは、実家の薬局経営の経験からみて、売り上げが少ないことと、人件費や経費が多いということが、同時に起こっているのではないかと感じてきました。
実際、病床は180床ありましたが、病棟の一部は閉鎖しており、140床ほどしか稼働できていませんでした。当時、病院の経営のことは本当に何も知らず、1ベッド当たりの日当点という言葉も、この時初めて知ったぐらいです。売り上げ=客単価×客数であるということからすると、いかに日当点を上げ、病棟の稼働率を上げるのかということが大切だということは、私でも分かりました。
また、人件費や経費を適正化していくためには、スタッフのモチベーションをアップし、高止まりの離職率を改善させ、さまざまな購入に対して見直しをしていくことが大切なのだということも、なんとなく分かりました。別の言い方をすれば、お客さんにたくさん来ていただくことと、従業員満足度を高めていくことを同時に進行させなければならないということが、おぼろげながら見えてきました。では、どうすればよいのか? それは、病院の特色を出さなければならないということでした。
■病院の現状と果たすべき役割を考え、独自性をつくる
病院の特色を出すというときに、いろいろな方法があると思います。院内でも、経営幹部と共に知恵を出し合いましたが、大きくは2つの方法があると考えました。
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次回配信は11月9日5:00の予定です
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