【医療法人嘉健会 思温病院 理事長 狭間研至】
■経営母体が変わった病院の運営に携わる
以前、本サイトにて、外科医が実家の薬局に帰り、再び病院で活動をすることになった経緯を2回にわたって執筆させていただきました。今回は、病院運営についての取り組みをまとめたいと思います。まず申し上げておきますが、私は病院のオーナーではありません。いろいろな経緯があって、新たに経営母体が変わった病院の運営に携わらせていただくことになりました。つまり、一から病院を立ち上げたわけでもなく、先代から引き継いだわけでもありません。有り体に言えば、運営に行き詰まった病院でM&Aが行われ、私が同じグループの医療法人で訪問診療を10年近く行っているご縁から、当院へ赴くことになったということです。
最初に、経営母体が変わったばかりの病院の見学に行ったのは2015年の2月でしたが、足を踏み入れた時の感想は、正直に申し上げて大変な病院を購入されたなぁ、というものでした。建物は昭和の薫りが随所に漂い、若い時にたくさんの病院に当直や日勤のアルバイトで行かせていただきましたが、古さではこれまで見た中でベスト3に入る感じでした。また、病棟や外来、検査室や手術室などをざっと見学させていただきましたが、ソフトもハードも色あせた感じでした。廊下が狭く、天井が低いからかもしれませんが、独特の圧迫感や閉塞感を感じました。
さらに、見学の後、当時の医局のスタッフ(今はもう、皆様いらっしゃいませんが)と面談したのですが、話がかみ合わず空虚な雰囲気で戸惑いました。この時には、私自身が当時勤めていた医療法人を離れるという話はなく、「大変な病院を買われたなぁ。これからいろいろ大変だろうなぁ。一体、どうやって変えていかれるのだろう」という思いを抱きつつ、病院を後にしました。
ところが、それから2カ月ほど経って、私にその病院に移ってくれないかというご依頼を突然いただきました。医師としては20年目、そのうち10年を外科、特に呼吸器外科領域で仕事をし、この後の10年を訪問診療の現場で仕事をしてきました。組織の運営経験は、実家の薬局の運営に約10年携わり、社員数が100名を超える組織にまで成長していましたが、まだまだ経営者としても悩み多き毎日で、右往左往している状態でした。そんな経験しかない私に、果たしてどこまでできるのか、ということはありましたが、「頼まれ事は試され事」の気持ちで病院運営に取り組むことになりました。
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