【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
前回は繰入金に頼らざるを得ない公立病院の苦悩と、打開に向けた一歩を提案した。ただ、すべての公立病院が赤字というわけではなく、繰入金なしでも黒字の病院が存在するのも事実だ=グラフ1=。公立病院といっても、その機能や置かれた環境なども異なるため、一律に論じることはできないが、トップランナーである大垣市民病院(岐阜県大垣市、903床)の存在は注目される。大垣市民病院は地方公営企業法の一部適用で、事務職員は市の職員であり、病院もローテーション先の一つだ。多くの公立病院が抱える悩みの種は存在するにもかかわらず、好業績を残している。今回は、経営アドバイザーとして同院を見てきた中で、データを交えつつ、その強さの秘訣に迫りたい。
グラフ1 2015年度 自治体病院 純医業収支 黒字の病院 クリックで拡大
総務省「地方公営企業年鑑」を基に作成。純医業収支は、他会計繰入金を除外した税金等を考慮しない医業収支を意味する
■大垣市民病院の給与費比率が低い本当の理由は
グラフ2は、医業利益率と給与費比率を病院ごとに見たものだ。給与費比率が高いと、医業利益率が悪化する傾向が見られる。大垣市民病院は、給与費比率が40%を下回っており、そのことが好業績の原因と考えることができる。給与費比率が低いと「大垣は給与が安いのではないか」と思うかもしれないが、そんなことはなく、むしろ高い方ではないかという印象だ。ただ、給与費比率と材料費比率は有意に負の相関をしており、大垣市民病院は材料費比率については非常に高くなっている=グラフ3=。
(残り2513字 / 全3205字)
次回配信は6月18日5:00の予定です
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】