【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
前回は公立病院の財務状況を悪化させている要因などを整理しつつ、厳しい現実を明らかにした。その中でも触れたが、公立病院は補助金が投入されるために甘えが生じやすかったり、給与が高止まりしたり、医療機器などでは一定額以上の契約の場合は入札が必要となり、それがかえって価格上昇の要因になるなど、構造的な問題があるのも事実だ。その一方で、住民が安心して暮らせる環境を整備する上で、公立病院が欠かせない場合もあることは確かだ。
今回は公立病院に多額の繰入金が注入されている状況を明らかにしつつ、政策医療とは何か、そして活性化に向けた施策を提案したい。
■不採算医療ともいわれる救急だが、民間病院も注力している
グラフ1は、他会計繰入金が年間20億円以上の公立病院を抽出している。大規模急性期病院が中心で、地域の中でも一定の存在感を持って、最後の砦としての役割を果たす施設もある。一方で、都市部の激戦区に立地し、新入院患者の獲得に苦戦する中、結果として病床稼働率が極めて低くなり、赤字補てん的な繰り入れが行われているケースもあるだろう。
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次回配信は6月4日5:00の予定です
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