【株式会社CBコンサルティング代表取締役、2016年度介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業事務局長・藤本進】
採用とはマーケティングである-。経験上、採用とはターゲットを絞って集中的に活動することであり、それこそが成功の近道だ。中小の事業所を運営するに当たり、経営者が最も頭を悩ませる課題の一つとして人材確保が挙げられる。CBコンサルティングでは医療・介護従事者に向けた幅広いサービスを提供しており、延べ32万人の会員情報がある。その会員向けに実施したアンケートを基に求職者の動向を理解・把握し、中小の事業所が取るべき採用戦略を探った。
成功につながるポイントは、▽誰に伝えるか▽何を伝えるか▽どのように伝えるか-の3つである。それができていない施設はどんな失敗をしているか。欲しい層が採用できていない事業所の多くは、求職者が求めている情報を理解せずに事業所本位な情報を発信している。
ミドル層の介護職からは「キャリアアップの転職を探しているにもかかわらず、ホームページには簡素化された給与や待遇などが載っているだけで、キャリアパスがあるのかないのかが分からず、問い合わせすることすら躊躇する」という声を多く聞く。一方、そういった事業所に、誰に何を伝えようとしているかを尋ねてみても、「決まっていない」もしくは「とりあえず採用できれば良い」など、あやふやな返答が返ってくることが多い。
採用担当の多くは求職者一人一人に個々の事情があり、さまざまな要望があると認識しているにもかかわらず、個別の情報発信をしていないのが実情だ。焦点を絞り切れずに当たり障りのない情報を発信していることが、マッチングしていない大きな要因と考える。
子育てママであれば子育てが最優先でできる環境なのか、休みやすい環境なのかが気になるだろうし、若手であれば成長できる職場であるか、稼げる職場であるかという点が欲しい情報である。
子育てママには何を伝えるのか。伝える情報としては事業所内保育所の有無や短時間勤務の可否、手厚い人員配置かなどがキーポイントとなる。
一方、若手人材に対しては教育プログラムや手当込みの給与総額、高い品質のサービス提供ができる施設なのかなどを伝える必要がある。
ただし、すべてのターゲットが満足できる情報を発信できる事業所はほとんどない。大切なことは、やみくもに情報を発信するのではなく、自分の事業所が持つ強みに合ったターゲットを絞り込むこと。そしてそのターゲットに合った情報を丁寧に伝えていくことが重要である。
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