【千葉大学医学部附属病院 副病院長・病院長企画室長・特任教授 井上貴裕】
在院日数の短縮は、急性期病院として高い評価を受ける上で必須の取り組みだ。「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)や、DPC/PDPSにおける効率性係数などは、在院日数を短縮すれば評価が上がるが、医療政策でも強く後押ししている方向性だ。
病床機能報告制度でも、高度急性期は診療密度が特に高い医療と定義されている。短期間で濃厚な治療を行い、早期退院へと導いて、優れたアウトカムを出す仕組みは重要だ。DPCII群の実績要件でも同様のことがいえる。ただ、取り組みには限界があるという声も多く、「転院待ちで在院日数が長くなる」「そもそも転院先がない」といった主張が繰り広げられることも少なくない。
今回は、転院待ちで本当に在院日数が長くなるのか、そして転院患者の割合を医療機関別に見ながら、在院日数短縮のために何ができるのか、医療政策がどのように後押しすれば、機能分化が進むのかを考える。
グラフ1は、高度急性期病院ごとの平均在院日数を退院先別に見た。自宅退院患者はおおむね10日程度だが、転院患者の在院日数は自宅退院に比べて2-3倍程度長い。つまり、しばしば指摘される“限界説”は事実という側面もあるだろう。ただ、グラフ1のAやD、そしてF(後述する武蔵野赤十字病院)のように、転院患者でも在院日数がそれほど長くない病院もある。そこからヒントを得れば、急性期の治療は終わっても転院待ちで入院しているというような状況を回避する手段があるのかもしれない。
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次回配信は1月29日5:00の予定です
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