【千葉大学医学部附属病院 副病院長・病院長企画室長・特任教授 井上貴裕】
2006年度診療報酬改定で7対1入院基本料が評価され、予想をはるかに超えて届け出病院が増えた。看護師を増員しても、それ以上に収入が増えるので、届け出をする病院が増加することは自然なことだ。結果として医療費増になってしまったが、悪い面ばかりではない。看護師の勤務環境改善に7対1の導入が果たした役割は極めて大きい。医療が高度化・複雑化し、書類作成、記録などの業務が増えている実情からすれば、7対1を届け出る病院が多過ぎるとはいえないのかもしれない。ただ、18年度診療報酬改定では、ハードルが引き上げられるとの予想がほとんどであり、実際に厳格化は行われるだろう。「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)の基準値の引き上げが最大の論点だろうが、全国平均が28.8%(16年8月から10月)との資料が示されたことから、28%は覚悟する必要がある。ただ、急激な厳格化は地域医療を崩壊させる危険性もある。今回は7対1入院基本料をどうすべきかについて考える。
■看護必要度の大幅引き上げで困るのは、救急患者が多い病院
病院経営者の立場からすれば、7対1は死守しなければならない。減収だけではなく、重症患者の受け入れ制限、ひいては新入院患者の減少につながる危険性も十分にあるためだ。今さら昔の水準に戻ろうといっても、現実的ではない。10対1になったから患者が減るわけでもないし、仕事は変わらない。ただ、明らかにミスマッチと思われる病院も存在する。
グラフ1は、15年度に7対1入院基本料を届け出ている病院で、100床当たりの手術件数と100床当たりの救急車搬送入院件数を足した数字の下位50病院だ。ここでの手術には、看護必要度のC項目に該当しないものも含まれる。手術がなく、救急車搬送入院(16年度改定でA項目の評価が引き上げられた)も少ない場合、看護必要度の基準を満たすのが厳しい病院のリストと捉えることもできる。これらには中小規模の病院が多く、既に地域包括ケア病棟を設置済みかもしれない。
一方、グラフ2は100床当たり全身麻酔手術と救急車搬送入院の数の上位50病院だ。専門特化した病院も多数あるが、これらの病院は看護必要度の基準を満たす可能性が高いといえるだろう。
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次回配信は9月25日5:00を予定しています
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