中林氏は、このような中小病院は、「一般病床しがみつき症候群」に陥っていないか、今一度自分たちの方向性を見つめ直してほしいと訴える。
10対1などの病棟を持つ病院に対し、「地域包括ケア病棟の方が、点数は上がります」と転換を提案しても、「10対1じゃないと医者が来ない」「職員のモチベーションが保てない」といったネガティブな反応もある。
ただ、今は何とか7対1や10対1を維持できても、18年度診療報酬改定では、看護必要度の要件がシビアになるのは確実で、10対1にも要件が加わる可能性もある。そこばかりに執着していると、次の一手を打つのが遅くなりかねない。
中林氏は、地域包括ケア病棟は、サブアキュートも担う地域医療のエキスパートであり、急性期、回復期、慢性期と幅広く対応できることをポジティブにとらえ直していいと訴える。そして、中小病院が地域医療の中核を担うのであれば、急性期機能に強みを持った地域包括ケア病棟を目指すべきとアドバイスする。
そして、「地域のニーズを知っている病院ほど、柔軟に発想できる」といい、まず、自院の入院患者の年齢や疾患の傾向をしっかり把握してほしいとしている。現在、70歳代の患者が多ければ、10年後には80歳代が“ボリュームゾーン”になるといったことを加味しつつ、地域の人口構成や人口動態、他の病院の動きなどを見極める必要があるのだ。
■新類型もできるだけ早期に判断を
今国会に提出される介護保険法改正案には、17年度末に設置期限を迎える介護療養病床の転換先として、介護保険法に基づく「新たな施設」の創設が盛り込まれる。また、設置期限後も介護療養病床を運営できる経過措置の期間も6年とすることも盛り込まれる。
中林氏は、18年度介護報酬改定では、廃止される介護療養病床などの点数は確実に下がるため、早期の転換を勧める。厚生労働省も新類型への転換を促したいはずで、それなりの点数を付けると予想されるという。そして注目すべきは、現在の介護療養病床や介護療養型老人保健施設(転換型老健)、さらには医療療養の医療区分1や2と比べた場合、どの点数が有利になるかだ。転換型老健は、通常の老健よりは点数が高いが 介護療養病床よりは低いため、転換が進まなかったが、18年度改定で新類型の施設の方を高めに設定する可能性もゼロではないという。
中林氏は、新類型の施設についても、参入の準備を進めておき、シミュレーションが可能になり、よい結果が期待できるなら、早いタイミングで判断した方がいいと強調する。21年度の介護報酬改定で一般病床などにも新類型への参入が認められる可能性が高いためだ。例えば13対1や15対1の病床を持つ病院が参入すれば、それだけ競争が厳しくなるので、先鞭を付けていた方が有利だからだ。
中林氏は、慢性期医療や介護施設の分野でも、自院の患者の状況を把握しておくことが重要と訴える。特に、独居世帯と老老介護の世帯だ。今は外来に来られても、5年後、10年後には通院できないかもしれない。そのような患者を把握しておけば、「50床は新類型に転換できる」などと、有力な判断材料になる。
そして、介護療養病床から新類型に転換する場合、大きなアドバンテージがあるといい、中林氏は「スタッフも建物も既に用意できているだけでなく、ベッドも埋まっており、ゼロから病床を埋める必要もないことを分かってほしい」と訴える。
中林氏は、「地域医療構想で厚労省は病床を削減しないと言っている。しかし、病院のまま残すとは一言も言っていない」と指摘した上で、新たな施設類型などへのシフトが進むと考えている。
厚労省が示した図でも、2013年と比べ、25年には診療報酬でカバーする病床数は減っている。その一方で、「将来、介護施設や高齢者住宅を含めた在宅医療等で追加的に対応する患者数」は29.7-33.7万人程度となっており、「病床を削減しない」という帳尻は合っているのだ。
中林氏は、自院や地域のマーケティングを進めながら、人口のボリュームゾーンに合った医療・介護を提供し、地域から信頼される病院、施設になってほしいとエールを送る。
図 2025年の医療機能別必要病床数の推計結果 クリックで拡大
医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会資料より
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