中央社会保険医療協議会(中医協)の支払側委員は10日、2016年度診療報酬改定案の答申後に記者会見を開いた。この中で幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、今改定で最大の争点となった7対1入院基本料の施設基準の見直しの影響を厚生労働省の資料に基づき独自に試算したところ、最大でも1万床程度の減少にとどまることを明らかにした。その上で、18年度改定へ向け、改めて基準を見直していく必要性を訴えた。【坂本朝子】
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幸野委員は改定案を総括し、「一部、継続課題は残ったが、全体としては非常に良い内容だった」と評価する一方、「結果として、診療報酬本体がプラス0.49%という引き上げになり、薬価についても国民に還元するという方向が示されなかったことについては残念」と語った。
また、7対1入院基本料の施設基準など入院医療の評価については、「われわれの主張する内容と一部異なる結果となったが、『重症度、医療・看護必要度』の評価項目ならびに該当患者の水準の見直しが行われたことや、急性期病院の入院医療をより適切に評価できるようになった指標が示されたことは評価をしている」と述べた。
■18年度改定では必ず3点セットで見直しを
一方、18年度に控えている診療報酬と介護報酬の同時改定について、幸野委員は、「地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携などを引き続き検討することが何よりも重要」との意見を述べた。また、機能分化を進めるためには、こうした議論に加え、「将来的には病床機能報告制度上の病床機能と、診療報酬上の評価の整合性を求めることも必要」との考えを示した。
さらに、7対1入院基本料の厳格化について、幸野委員は、指標として「重症度、医療・看護必要度」「平均在院日数」「在宅復帰率」の3点セットで見直さなければ意味がないとの従来の主張を改めて展開。16年度改定では、平均在院日数は見直されず、在宅復帰率は「指標が形骸化していて高い数値が出るような計算式になっている」と断じ、どのくらいの病床が本当に削減されるのか検証をしていく必要があると指摘。「次回改定では必ずや3つをセットで見直していくという主張は今後も続けていきたい」と強調した。
■かかりつけ薬剤師や薬局の活躍に期待
また、今改定で示された処方医と連携して一元的かつ継続的に患者の服薬指導を行う「かかりつけ薬剤師」の評価について、花井十伍委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、「調剤薬局だけでなく、薬剤師全体、職能全体が正念場を迎えていると個人的には思っている」と述べ、「本来、国民が利益を得られる医薬分業という姿を見せていただきたい」とその活躍に期待感を示した。
幸野委員もかかりつけ薬剤師の活躍に期待しているとし、「長い目で見ると、一時的な負担はあるものの医療費は減少していく傾向に機能していくのではないか」と述べた。
そのほか、平川則男委員(連合総合政策局長)が、看護職の月平均夜勤時間数を72時間以内とする入院基本料の要件が一部緩和されたことについて、長時間夜勤が助長されないか把握するとともに、労働条件の悪化が見られた場合には早急に要件の見直しを求めていくと強い姿勢を示した。また、複数の委員から、今回新設された「かかりつけ歯科医」の評価に関して、その役割や機能が十分に議論されていないことを問題視する声が上がった。
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