財務省が来年度の介護報酬改定の引き下げを求める提案をまとめたことなどを受け、特別養護老人ホーム(特養)を運営する法人などで組織する全国老人福祉施設協議会(全国老施協)は15日、記者会見を開いた。石川憲会長や同協議会の関係者は、介護ニーズの増大が見込まれる中、大幅な報酬引き下げを行うことは「サービスの根幹を揺るがし、介護崩壊を招く」と強調。来年度の介護報酬改定では、少なくとも現行水準の報酬を維持するよう強く主張した。【ただ正芳】
介護報酬、9年ぶりマイナス改定を提案-財務省
介護事業の収支差率、10%超が3サービス―厚労省、経営実態調査結果を提示
厚生労働省は3日、来年度の介護報酬改定に向けた議論の基礎資料となる「2014年介護事業経営実態調査」の結果を社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会に報告した。調査結果では、特養の収支差率が8.7%となるなど、大部分のサービスで収支差率が5%以上となったことが示されている。
この結果を受け、財務省は8日、介護報酬改定の引き下げ案などを財政制度等審議会財政制度分科会に提案した。案では、介護事業の平均収支差率が、一般の中小企業の水準を大幅に上回っている点を問題視し、「介護報酬の基本部分に係る適正化(少なくとも中小企業並みの収支差となるマイナス6%程度の適正化)が必要」と提言。特に特養については、「内部留保が蓄積しない水準まで介護報酬水準を適正化することが必要」としている。 ■平均収支差率のみでの報酬改定論「大きなリスク伴う」 会見した全国老施協の関係者は、「2014年介護事業経営実態調査」で特養の収支差率が8.7%となっている一方、同協議会や東京都福祉保健局の調査では、収支差率は4.3%となったことや、福祉医療機構の調査では、従来型は5.7%、ユニット型は7.3%、一部ユニット型は5.8%という結果が示されたことを提示。調査主体によって異なる結果が出ている点について、関係者は、はっきりとした理由は分からないとしながらも、効率的な経営を行う事業所と、そうでない事業所の間の差が大きいことが影響した可能性があると指摘した。その上で、経営状況に大きなばらつきが見られるにもかかわらず、平均収支差率だけで報酬の在り方を論じることは、サービス提供を維持する上で大きなリスクを伴うとした。 また、仮に特養の報酬をマイナス6%とした場合、「5割を超す施設が赤字経営となる」とし、従来あるサービス提供すら阻まれかねないと分析。財務省が求める大幅なマイナス改定が実現した場合、「介護保険サービスの根幹を揺るがす介護崩壊を招くことにつながる」と訴えた。 ■内部留保を理由にした報酬引き下げ論「されるべきでない」 特養を運営する社会福祉法人の内部留保が3億円余りに上っているとされている点については、その内訳には、実際の現金などの入金を伴わない項目や、建て替えの積立金なども含まれていると指摘。さらに、社会保障審議会福祉部会が、あいまいな特養の内部留保の明確化を目指し、議論を進めている段階であることから、「内部留保を理由にした介護報酬引き下げ論は、されるべきではない」と訴えた。
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