厚生労働省は11日、社会福祉法人制度の改正などを検討する社会保障審議会福祉部会(部会長=田中滋・慶大名誉教授)に、社会福祉法人の貸借対照表や収支計算書、役員報酬基準の公表を義務化することを提案した。この日の部会では、ほぼ全委員がこの提案を前向きに評価した。厚労省は、来年の通常国会に、社会福祉法人の活動などを規定した社会福祉法の改正案の提出を目指す。【ただ正芳】
社福経営の健全性確保などを新規要求-介護関連の来年度概算要求
「社会福祉法人の役割、ますます重く」-規制改革会議・岡議長インタビュー(下)
【解説】再燃・社福の内部留保
現在、社会福祉法人は、会計年度が終わるたびに、事業報告書や財産目録、貸借対照表、収支計算書などを作成しなければならない。こうした書類を閲覧できるのは、サービスの利用を希望する人など、利害関係のある人に限定されているが、現況報告書と貸借対照表、収支計算書については、インターネット上で公表することが厚労省の通知で義務付けられている。
いずれも社会福祉法人の運営の透明性を確保するための取り組みだが、関係者や識者の間では、それだけでは不十分とする意見が根強い。事実、今年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」では、役員報酬基準や役員区分ごとの報酬などの総額の公表についても義務化すべきとする意見が盛り込まれた。また、7月に取りまとめられた厚労省の「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」の報告書では、現状は利害関係者だけが閲覧できる関係書類について、国民の誰もが見ることができるようにすべきとする見解が示された。 ■定款や事業計画書などの公表の義務化も提案 こうした状況を受け、厚労省は、社会福祉法人の運営の透明性を高めるため、社会福祉法上に、▽定款、事業計画書、役員報酬基準を閲覧対象とし、閲覧請求者は国民一般とする▽貸借対照表、収支計算書、役員報酬基準を公表とする▽役員名簿や役員区分ごとの報酬総額、補助金や社会貢献活動に関する支出額、役員の親族などとの取引内容などを含む現況報告書は、閲覧・公表の対象とする―を明記することを提案。さらに公表すべき情報については、都道府県や国がICTなどを活用して集約した上で、分かりやすく開示する仕組みの導入を検討することも提案した。 厚労省の提案に対し、武居敏委員(全国社会福祉協議会全国社会福祉法人経営者協議会副会長)は、個人情報まで開示してしまうような仕組みにならない工夫が必要と指摘。松原由美委員(明治安田生活福祉研究所主席研究員)は、集めた情報をそのまま発表するのではなく、誰が見ても分かりやすい形で示す必要があると述べたものの、大筋の内容については、ほぼ全員の委員が前向きに評価した。
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