第1回「病院DXアワード」(CBnews主催)で、初の対象に輝く、製品・サービスは-。続々とエントリーが集まる中、4人の審査員に、病院DXへの思いを聞いた。3回目は、NTTデータ経営研究所ビジネスストラテジーコンサルティングユニットマネージャーの清水祐一郎氏が、病院DXへの一歩を語った。
DXだけでなく、医療においてはどんな取り組みでも、患者の安全が最優先です。そして医療は人対人の関係で成り立つ産業です。業務が全部機械にとって変わることはありません。ただ、すでに電子カルテなどの基幹システムの導入が済んでいる病院が増えています。基幹システムとそれ以外の付随する業務システムをうまく連携していくと、DXによる効率化などをスムーズに進められます。
基幹システムについてはすでに大手ICT企業が中心となって整備しています。現在はそれに付随するシステムなども同じ大手が内製をしていることも多いですが、今後は外資やベンチャー企業による製品開発が増えることも予測されます。安全担保とコストカット・効率化のバランスを考えたうえで、新興勢力によるさまざまな新技術の導入が病院においても進んでいくことでしょう。
DXは、患者の利益につながります。例えば、予約電話を受けるだけで、過去の情報を担当職員の手元に出し診察の用意を進めることは、患者へスムーズな対応つながります。入院患者との面会システムの整備は、患者や家族にとって役立ちます。全ての情報が連携していくことは、患者の利益になります。つまりDXで患者と無関係なものは、突き詰めるとほとんどありません。
もちろん病院側にも大きなメリットがあります。人手不足は今後、どんどん進行します。今は人手が足りていても、5年、10年後はそうだとは限りません。早めにDXに関心を持つことが、将来の問題への対策になります。
メリットの多いDXですが、病院での取り組みを広げていくためには、各病院における導入・改善事例の情報共有が大事になります。そのきっかけを作るためには、いち早く新技術を採用する病院や医療関係者である「イノベーター」の存在が必要です。業界にかかわらず、新しい技術や流れが生まれると、抵抗感を持つ人が一定数は出てきます。それでも社会や業界全体の改善に重要なことは、イノベーターを大事にして、続く人たちが出てきて、たくさんの事例が作られていくことを待つことです。関係者が一歩を踏み出さないと何も始まりません。まずは知識を広げていくなど最初の取り組みをやってみることが大切です。
清水祐一郎 氏
株式会社NTTデータ経営研究所 ビジネスストラテジーコンサルティングユニット マネージャー
2015年東京大学総合文化広域科学専攻を修了。医療機器メーカーを経て、19年より現職。ロボットやAI、脳科学等の先端技術の事業化戦略、事業推進などに関するコンサルティング業務を専門とし、病院でロボットやAIなどを活用した先端テクノロジーの導入のための実証実験を支援した実績を有する。著書に『おうちで学べる Pythonのきほん』(翔泳社)、『今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいサービスロボットの本』(日刊工業新聞社)、『医療AIの知識と技術がわかる本 事例・法律から画像処理・データセットまで』(翔泳社、共著)などがある。
(残り0字 / 全1366字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】
【関連キーワード】