新型コロナウイルス禍から2年。まだまだ終息の兆しは見えていない。医療現場では感染リスクと隣り合わせの日々が続く中で、医療従事者の安全をどう守るのか-。医療機関の経営層に突き付けられた大きな課題が横たわる。まずは医療従事者自らが、感染対策を徹底することが求められるが、医療現場によって感染対策への意識に差がある点は否めない。こんな医療現場の現実を目の当たりにした東京都看護協会では、仮想現実(VR)端末を使った「飛沫シミュレーション」を開発。感染リスクを可視化することで、医療現場に潜む感染リスクを再認識してもらい、感染対策への“気づき”を与える。シミュレーションの開発に関わった危機管理室危機管理係主任の菊地美貴氏と同係の浅野恵子氏に、開発背景や狙いなどを聞いた。【川畑悟史】
VR端末を使った「飛沫シミュレーション」の開発・運用を手掛ける東京都看護協会危機管理室の菊地氏(左)と浅野氏
-VRで体験できる「飛沫シミュレーション」とはどういったものですか。
菊地氏 VR空間で飛沫の飛散を可視化し、飛沫を疑似体験することで、感染予防の動機付けを高めるツールです。VRを使うことで、飛沫感染リスクの高い、「鼻咽頭の検体採取」と「口腔ケア」、「気道吸引」それぞれのケアによる感染リスクを視覚的に理解することができます。また、感染管理認定看護師が監修しており、ケアに応じて必要な個人防護具(PPE)の選択と着脱順序も、このシミュレーションを通じて学ぶことができます。
-開発した背景を教えてください。
浅野氏 2020年からコロナの流行があり、当協会で、クラスターが発生した施設への支援に行く中で、現場での感染対策の脆弱な部分が見えてきました。
(残り2205字 / 全2933字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】