【飯塚病院副院長・改善推進本部長 福村文雄】
飯塚病院では、四半世紀以上TQM(総合的品質管理)活動を続けてきました。ただ、前回述べたように、現場の業務密度は高まっており、職員は日常業務で手いっぱいです。読者の中には、「TQM活動自体が負担となっているのでは」との懸念もあるかもしれません。
事実、TQM活動を終了したメンバーへのアンケート結果からは、「やって良かった」や「成長できた」など、肯定的な意見がある一方で、やらされ感があり、疲労や孤独を感じており、「もうやりたくない」といった本音も見えてきます。
そこで、最近10年間のTQM活動のテーマの変遷と活動後の日常業務への影響を調査しました。年間約20チームがTQM活動にかかわり、10年で200近い活動を進めてきましたが、このうちの約半数が、日常業務の負担増加につながっていました。
活動を通じ、現場の改善を進める人材を育てることが目標ですが、活動でやる気をそぐことなく、管理職と現場スタッフが共にウィンウィンの関係に近づけることも重要なポイントでしょう。
2.再び逆輸入
米国シアトルにあるバージニア・メイソン・メディカルセンター(以下VMMC)は、2000年に経営難に直面した後、トヨタ生産方式(TPS)を導入しました。現在、病院の品質管理においては米国のリーダー的存在です。
トヨタ生産方式では、良い車を安く提供することを目的に、ムダの排除を徹底して進めます。その柱はジャストインタイム方式※と自働化ですが、海外ではリーン(=ぜい肉をそぎ落とした)マネジメントとも呼ばれています。
VMMCでは、トヨタ生産方式をマネジメントや人材育成に結び付け、巧みに“しくみ”をつくりながら、発展させています。
※緻密な生産計画を立てながら、例えば必要な部品を、必要なときに、必要なだけ供給していくことなどを指す。生産プロセスの「ムダ、ムラ、ムリ」をなくし、効率を良くする。
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