地域包括ケアシステムの構築などの成否の鍵を握ると言える在宅医療。その提供体制の整備の一環として、在宅患者に適切な鎮痛療法などを実施している医療機関を高く評価する「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」(緩和ケア加算)が、今年4月の診療報酬改定で創設された。「在宅療養支援診療所」(在支診)や「在宅療養支援病院」(在支病)、同加算を届け出る医療機関数などを、地方厚生局が15日までに公開した最新データからCBnewsが独自集計した結果、都道府県格差が浮き彫りになった。【佐藤貴彦】
■在支診・在支病の評価をおさらい
政府が重視する在宅医療の提供体制の整備は、むろん、診療報酬による政策誘導でも進められてきた。地域の患者に在宅医療を主に提供する在支診・在支病などの評価がそれに当たるが、最新の届け出施設数を紹介する前に、評価の変遷を振り返りたい。
まず在支診の評価は06年度改定で創設された。在支病の評価ができたのは次の08年度改定で、診療所がない地域で、在支診に代わって在宅医療を提供する病院が評価される仕組みになった。次の10年度改定では、許可病床が200床未満なら、近くに診療所があっても在支病として届け出できるルールに見直された。
ターニングポイントと言えるのは12年度改定で、「機能強化型」の在支診・在支病の評価が創設された。強化型の要件は、▽常勤医師3人以上▽緊急の往診の実績(年5件以上)▽在宅看取りの実績(年2件以上)-で、実績を評価する視点が導入された形だ。強化型には、すべての要件を満たす「単独型」と、ほかの施設との合計で基準をクリアする「連携型」があり、いずれも通常の在支診・在支病と比べて高く評価される仕組みになった。
続く14年度改定では、強化型の実績件数が厳しくなり、基準は緊急往診が年10件以上、在宅看取りが年4件以上になった。さらに連携型の場合、年4件以上の緊急往診と年2件以上の在宅看取りの実績を各施設が持つルールになり、実績がない医療機関は強化型の施設基準の取り下げを余儀なくされた。
実績要件の厳格化には経過措置が設けられたため、その影響は14年10月以降に顕著になっている。厚労省の調べによると、15年7月時点で連携型の強化型在支診を届け出ていたのは2593診療所で、前年同期と比べ875診療所減少。連携型の強化型在支病も401病院から307病院に減った。強化型の評価が創設されてから、減少は初めてだった。
また14年度改定では、常勤医師を3人以上確保できない在支診・在支病のうち、緊急往診が年10件以上あり、在宅見取りが年4件以上ある医療機関が、「在宅療養実績加算」で高く評価される仕組みが創設された。
■往診・看取りに続く第3の実績要件
14年度までの改定では、在宅医療の充実が図られたと言える。これに対し、直近の16年度改定の基本方針では「質の高い在宅医療の確保」が掲げられた。この方針に基づいて創設されたのが緩和ケア加算だ。
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