全国で57病院などを運営する独立行政法人「地域医療機能推進機構」(JCHO、尾身茂理事長)は来年春から、後期研修を修了した卒後6年目以降の医師を対象とした「JCHO版病院総合医」の養成に乗り出す。幅広い診療能力を身に付け、地域医療を担う人材を育てることが狙いだ。創設の背景などについて、担当する内野直樹理事に話を聞いた。【聞き手・敦賀陽平】
病院総合医の創設には、へき地医療の経験のある理事長の強い思いがあります。JCHOでは発足した2年前の春から、理事長を中心に検討を進めてきました。
日本には、医師が不足している過疎地や、「無医村」と呼ばれる場所が数多く存在します。こうした地域では、幅広い疾患について診る必要がありますが、臓器別に専門性が分かれている現代の医療では、こうした人材が不足しています。
例えば、私が専門とする産婦人科の世界ではかつて、1人の医師が分娩も婦人科手術もすべて行っていました。ところが、現在では分娩は産科、手術は婦人科、不妊治療は専門外来と細かく分かれています。「お腹と胸が苦しい」と訴える患者に、「胸は循環器内科を受診して」などと言って、他の診療科に回すということが日常的に起こっています。
しかし、医師が少ないへき地では、そんな悠長なことは言っていられません。一番不利益を被るのは患者です。医師が充足しているといわれる都市部においても、専門性が細分化され過ぎたことで、どの診療科でも受け入れてもらえず、その“すき間”に陥ってしまう患者もいます。つらい症状で受診したすべての患者さんを診療できる総合医の育成が急務なのです。
■新専門医制度の方針には反しない
―日本専門医機構は現在、新専門医制度について検討を進めています。
JCHOの病院総合医は、後期研修を修了した卒後6年目以降の医師が対象です。専門医資格を取得した方も受け入れるので、新制度の方針に反することはないと考えています。
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