座間の新病院開院で「二つの病院が一つに」
海老名総合病院・服部病院長
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座間総合病院シリーズ
第1弾 「座間の新病院、総合診療科を前面に」
第2弾 「病院辞めていた1年間が看護の幅広げた」
第3弾 「病院は目指す看護を応援してくれますか」
第4弾 「リハビリ充実で退院早期に」渡病院長インタビュー
第5弾 座間総合病院「チーム医療で患者第一実現」
海老名総合病院は、2017年4月からの県央二次医療圏での救命救急センターへの指定に向けた準備を進めている。救命救急センター指定とは、急性心筋梗塞、脳卒中、心肺停止、多発外傷など二次救急で対応できない複数診療科領域の重篤な患者に対し、高度な医療を提供する三次救急医療機関になることだ。 国は、重篤な救急患者の医療を確保するために、都道府県が策定する医療計画などに基づき、救命救急センターを指定するよう促している。神奈川県の医療計画では、原則として二次医療圏に1カ所の救命救急センターを整備する方針を掲げているが、海老名総合病院の位置する県央医療圏だけは救命救急センターがない。 海老名総合病院が指定を受ければ、同県で救命救急センターのない、“空白”の医療圏が解消される。県央二次医療圏は30年に向けて高齢化が進むのはもちろん、東京のベッドタウンとして人口増加も続き、救急医療の需要は確実に増える。同病院ではすでに、救急搬送で年間約6500台を受け入れており、実績面では十分だ。 救命救急センターの指定要件には、専用病床を有していることや、センターの責任者が直接管理する専用のICU(集中治療室)が必要な数だけあることなどがあるため、同病院では16年度中に施設などの要件をクリアする方針だ。 また指定に向け、現行2人の救急部を2倍程度に増員するほか、救命救急センターになると、複数診療科の協力も重要なため現在、院内で指定に向けた職員向け研修会などを随時開催している。 同病院では、国の15年度の病床機能報告制度で、ICUやHCU(高度治療室)のある2つの病棟で提供する医療機能を、高度急性期として同県に報告している。救命救急センター指定を受けた後は、センター専用の20床の病棟も高度急性期機能として報告する予定だ。診療密度、外保連手術指数、複雑性指数などが大学病院並みと認められ、4月からはDPCのII群病院になる。 また、近隣の病院との連携体制の強化も進めている。現在、海老名市の住民に対して三次救急医療機関の役割を果たしている東海大医学部付属病院(同県伊勢原市、804床)の猪口貞樹院長を交えた意見交換を行ったりしている。 ■海老名総合病院と新たな座間総合病院で医療機能分担へ 海老名市に隣接した座間市にあり、直線距離で6キロ程度離れている座間総合病院は、急性期の機能も持ちながらも、回復期と慢性期の機能も有しており、神奈川地区のJMAの中で、機能分化をしていくことになる。
海老名総合病院と、4月に開院する座間総合病院のある県央二次医療圏は、ほぼ真ん中に相模川が流れており、両病院は同二次医療圏の東側に位置する。同二次医療圏東側には、このほかの中核病院として、大和市立病院(同県大和市、403床)があり、それぞれが連携して、同二次医療圏の主に東側で医療を提供していくことになる。 JMAは、同二次医療圏の消防とも情報交換を密にし、救急搬送時には、それぞれの病院が持つ医療機能を目安に搬送してもらうよう働き掛けている。 年3回定期的に開いている海老名市、座間市、綾瀬市の各消防本部の救急隊との会合では、海老名総合病院が救命救急センターへの指定に向け準備を進めていることを説明している。この救急隊との定期会合では、救急隊員が医師の指示の下に救急車内で実施する医療行為や手技の講習などをして、一人でも多くの命を救えるように訓練している。 ■座間総合病院の渡院長とはコミュニケーションを大事に 座間総合病院は総合診療科が前面になり、ワンストップで患者を受け入れ、同科で医療を完結できず、より専門領域の医師が対応する必要があれば、他科に振り分けることになる。 海老名総合病院にはすでに総合診療科があり、同科の立ち上げにもかかわった田所浩・同科部長が、座間総合病院の副院長兼総合診療科部長に就任する。 JMAでは、海老名総合病院と座間総合病院の、それぞれの総合診療科に関しても、急性疾患に関する患者は海老名総合病院が主に受け持ち、救命救急センターと連携を図るようにする一方、座間総合病院は、主に慢性疾患に関する患者を受け持つなど、同じ総合診療科の間でも機能分化を進める考えだ。 両病院の連携を推進するには、それぞれの地域連携課の存在が重要になってくる。組織上は、両病院に地域連携課が設置されることになるが、服部院長はバーチャルに地域連携課を一体化するイメージを持っており、機能面では両病院のそれぞれの地域連携課が、どちらの病院にも属するようにする。 服部院長は、「地域連携課がバーチャルに一体化することで、患者さんは海老名総合病院から座間総合病院に転院するのではなく、転棟するようなイメージ。もちろん、その逆の座間総合病院から海老名総合病院への転棟もある」と説明する。 座間総合病院の院長には、渡潤・海老名総合病院放射線科部長が就任する。海老名総合病院の服部院長はこれまで、渡院長が一診療科の部長だけでなく、同病院の産業医をしていたことから、渡院長とは院内の衛生環境や労務上の問題について緊密に意見交換をしてきた。 服部院長は、「座間総合病院の渡院長とは、ライバル関係ではないが、互いに連携をしながらも、いい緊張感を保っていきたい。そのためには、これまで以上にコミュニケーションが大事になってくる」と話す。 ■編集後記 今回を含め6回にわたり、4月に開院する座間総合病院を特集してきた。一連の取材を通じて浮かび上がってきた座間総合病院が目指している医療の姿は、「患者を中心としたチーム医療」だった。 JMAの鄭義弘理事長は、座間総合病院で総合診療科を前面に出す理由について、「病院機能は細分化し、患者さんは一体、どの診療科を受診すればいいのか、分かりづらくなってきています。まずはワンストップで患者さんを受け入れ、適切な診療科あるいは施設へ誘導する必要がある」として、あくまで病院機能は患者の利便性が重視されるべきだと強調した。 渡院長はこれから一緒に働くスタッフに対し、「患者さんの“病気”だけを見ないでもらいたい。患者さんに向き合って、その家庭の状況がどうなっているのか、どのような人生を送ってきたのかなどを考えてほしい」と注文を付けた。 JMA海老名地区の看護師に集まってもらった座談会では、家族支援専門看護師の竹村華織さん(海老名メディカルサポートセンター看護副部長で座間総合病院看護副部長に就任)や産後復帰経験のある相澤愛さん(海老名メディカルサポートセンター)、緩和ケア認定看護師の小林理恵子さん(海老名総合病院)、吉田圭吾さん(同)が一堂に会した。 竹村さんは、「ある提案をして、患者さんやそのご家族の顔がパッと変わるときに、“寄り添えたな、看護師をしていてよかったな”と感じる」と、これまでの体験を交えて話してくれた。「よさこい」が趣味の相澤さんは、病院の中でもボランティアとして患者さんの前で披露し、そこで看護師として接している患者さんが楽しそうに喜んでいる姿を目の当たりにすると、「逆に自分自身が患者さんの笑顔からパワーをたくさんもらっている」とうれしそうに語った。 小林さんは、患者がその人らしく、どのように生き抜いていけるか、それを看護でサポートするにはどのようにすればいいかに興味を持ち、緩和ケア認定看護師になった。認定看護師になれたのは、病院が仕事に支障がない勤務シフトをつくってくれたおかげだと振り返る。吉田さんは、前職がシステムエンジニアという異色の経歴を持っていた。「看護師は体を動かして、手でもって介入して、患者さんが元気になるのをお手伝いして直接、感謝の言葉を掛けられたりする。充実感が違う」と話していた。 また、JMAが開催した座間市の市民説明会で、座間総合病院の副院長兼看護部長に就任する上野美恵子さん(海老名メディカルセンター副院長兼看護部長)は、「病院は皆さんにとって、決して来たい所ではないでしょう。しかし、来なくてはいけなくなることもあります。私たちは、患者さんやご家族が、そのチーム医療の中心的な存在になり、少しでも不安を軽減するような医療や看護をしていきたいと思います」と話した。
鄭理事長はかねてから、「患者さんを待つのではなくて、私たちの方からアプローチする必要がある。法人内で、ワンストップで患者さんや要介護者を受け入れて、機能分化した各病院や施設などがしっかりと役割を果たしていくのが大事」と話している。座間総合病院の開院により、JMAの将来ビジョンへの取り組みが本格的に動きだす。 ■開院前に内覧会開催し、地域住民など招待
JMAは4月1日に開院(外来診療の開始は4日)する座間総合病院の内覧会を3月27日に開催した。
午前中に近隣住民、午後には地域の診療所の医師などを招待した。
同病院の最寄りとなる小田急線相武台前駅からは徒歩で15分圏内だが、同日は、駅と病院の間を臨時のシャトルバスが行き来した。
病院の正面入り口では、JMAの鄭理事長、渡病院長、田所副院長、上野看護部長のほか、病院スタッフらが出迎えた。内覧会に訪れた人は、病院内を見学。入り口を入った1階のモノトーンの受付に始まり、外来診察室、リハビリテーション室、手術室、さらには病室までのルートを、ゆっくり歩いて巡った。内覧会参加者は午前と午後を合わせ、約1700人だった。
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