病院は目指す看護を応援してくれますか
JMA海老名地区看護師座談会
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座間総合病院シリーズ
第1弾 「座間の新病院、総合診療科を前面に」
第2弾 「病院辞めていた1年間が看護の幅広げた」
第4弾 「リハビリ充実で退院早期に」渡病院長インタビュー
第5弾 座間総合病院「チーム医療で患者第一実現」
第6弾 座間の新病院開院で「二つの病院が一つに」
【座談会参加者】
竹村華織さん 家族支援専門看護師
(海老名メディカルサポートセンター看護副部長)
相澤愛さん 産後復帰経験あり
(海老名メディカルサポートセンター)
小林理恵子さん 緩和ケア認定看護師
(海老名総合病院)
吉田圭吾さん 男性看護師で入職2年目
(同)
竹村さんは、来年4月に開院する座間総合病院(同県座間市、回復期リハビリテーション病床、療養病床を含む352床)に異動する予定で、急性期だけでなく、回復期、慢性期医療にも注力する座間総合病院で提供する看護で中心的な役割を担うことが期待されている。 竹村さんの仕事は、これまで集中治療室(ICU)や急性期患者の患者家族を看護するスタッフに対する、家族のアセスメント(課題の把握)やケア方針への相談支援が中心だったが、座間総合病院では、直接、患者家族を支援することになる。竹村さんは、「座間総合病院では、同じ脳血管障害やがんの患者さんやご家族でも、急性期から在宅へつなぐ幅広い視野での家族支援が必要。これまで積んできたキャリアをもってチャレンジしていきたいです」と、新たな職場への期待に胸を膨らませている。 相澤さんは1人目の産後復帰からJMAに入職した。その後すぐに2人目を妊娠したため、「同僚に迷惑を掛けてしまうから、もう職場には復帰できないのではないか」と不安な気持ちを抱いたという。それに対し、2人目の産後復帰時に、上野美恵子さん(海老名メディカルサポートセンターの副院長兼看護部長、来年4月から座間総合病院の看護部長に就任予定)から、「子どもは、これからの日本を支える存在だから、子どもを産んで育てることは大切よ。自信を持って職場に帰ってきてね」と声を掛けてもらったことを忘れない。 独身時代は、他の急性期病院の小児科病棟で勤務していたが、産後復帰に当たり、勤務体制にも配慮してもらい、1人目のときは、JMAが運営する海老名メディカルプラザの内科外来、2人目のときから療養病棟に配属された。高齢者らの看護を経験することになり、キャリアの幅を広げている。 小林さんに、緩和ケア認定看護師を取得した理由を聞くと、「終末期(ターミナル)のケアに関心があり、以前、がんの患者さんの看護をしていて、がん性疼痛で小学生のお子さんの面倒が見れないことに苦しむ女性から、『何でこんなつらい思いまでして、生きていかなくてはいけないのか』と訴えられたことをきっかけに目指しました」と話す。 吉田さんの前職は、システムエンジニア。パソコンの前に座り、日々顧客のための仕事をしてはいたが、何となく満たされないような感覚に悩み、看護師への転職を決意した。 吉田さんは、「システムエンジニアは、パソコンのキーボードの『Delete』を押せば終わってしまうような仕事ですが、看護師は体を動かして、手でもって介入して、患者さんが元気になるのをお手伝いして直接、感謝の言葉を掛けられたりします。充実感が違います」と話す。 参加者にはこの後、看護師を目指した理由のほか、患者から学んだことや職場の雰囲気などを聞いた。JMAの看護教育プログラムには、「あなたのしたい看護はなんですか」との問い掛けがあるため、看護師は、自身の目指す看護を追い求めているようだ。 竹村さん:
この仕事をしていてよかったと思うのは、ある提案をして患者さんやそのご家族の顔がパッと変わるときがあります。そのときに寄り添えたな、看護師をしていてよかったなと実感します。 患者さんから学ぶことはたくさんあります。ある患者さんやご家族から言われたことが、いまだに印象に残っています。それ以前、私は、患者さんやそのご家族は、なるべく情報を共有し、問題解決した方がいいとステレオタイプに考えていました。しかし、ある患者さんが、ご家族には病気のことは話したくはないと言うのです。 私が、なぜご家族に知らせたくないのかと聞くと、「若いあなたには分からないと思うけど、こんな家族もあって、それぞれ考え方があり、皆が同じではない」と言われたのです。はたとわれに返った感じでした。今思うと、この体験が家族支援専門看護師になろうとしたきっかけです。 2025年に向けた国の方針は、病院の中だけで患者さんを看るのではなく、地域で患者さんを看ていこうということになり、家族の存在がより重要になります。座間総合病院で一緒に働く後輩の看護師には、これからは患者さんをケアしているだけでは限界になるので、家族をいかに巻き込んでいくか、それも、どれだけ負担を軽減しながら巻き込んでいくかを伝えていきたいです。 相澤さん:
この職場には、自分と同じように出産・育児を経験し、子育てをしながら勤務する同僚看護師も多いので、心強いです。また、外の保育園だと、子どもが突然発熱すると、すぐに電話がかかってきて、引き取らないといけませんが、この病院内の保育園は、ちょっとした熱であれば、少し様子を見てくれたりもします。勤務が押してしまったりしたときも、配慮して預かってくれたりします。
以前、子どもが風邪を引いたりして早退しなくてはならなかったとき、同僚が「お母さんの代わりはいないのよ。後はやっておくから心配しないで帰りなよ」と言ってくれました。私のために仕事のシフトが変わってしまうのに、と思いましたが、本当に感謝しています。 小林さん:
私は、新潟県の衛生看護科を卒業した後、看護師になるため、JMAが運営していた「海老名高等看護学院」(1990年2月―2007年3月)に入学しました。そして国家試験に合格し、そのまま海老名総合病院に入職しました。
緩和ケア認定看護師には当時、科長だった竹村さんに推薦してもらいました。1年間、現場での業務を続けながら、神奈川県看護協会の緩和ケア看護師教育課程を受講しました。自分のお休みも利用しながら、仕事や学業に支障が出ない勤務シフトを病院がつくってくれたおかげで、09年に認定を取得することができました。
もともとその人がその人らしく、どのようにすれば生き抜いていけるのか、また、それを看護でサポートするにはどうすればいいのかに興味がありました。それまで緩和ケアとは、ホスピスケアを指していたのですが、02年に世界保健機関(WHO)が定義を見直し、「病気に罹患したときから適応する」など、がん以外の疾患を持った患者さんにも提供されるものであることを打ち出しました。このことも認定取得を後押ししました。 緩和ケア認定看護師になってよかったです。緩和ケアは、その患者さんが、病院の門をたたいて入ってきたとき、つまりその患者さんの体がつらい、心がつらいというときから始まると思っています。
亡くなる前の患者さんと接することが多く、以前は患者さんにどのように接していいか、この看護は必要だったかなどを、実践の中で振り返っていました。認定を取得してからも振り返ることは多く、悩むことも増えましたが、悩み続けることが緩和ケア領域において必要なことだと気付く機会にもなりました。
吉田さん:
今、心臓血管センターの循環器内科と心臓血管外科病棟で勤務して2年目です。入職した1年目、同期2人の女性看護師に比べ、1つのことに集中するあまり、業務を覚えるのが遅くて、焦ることがありました。 そのときに、男性看護師があるアドバイスをしてくれました。その人は、私の看護学校の先輩でもあり、この病院に入ってから、私のプリセプターを務めていただいた人です。このアドバイスにより、私の仕事への姿勢が変わりました。 その先輩は私に対して、「この病棟の業務の範囲には限りがあるけど、必要な知識は無限なので、1年目はとにかく勉強をして知識を得るべきときだよ」とアドバイスしてくれました。それを聞いて以来、業務がスムーズに進むようになりました。
先輩の看護師を見ていると、認定を取得していると判断能力がすごいなと思います。深い知識によりリスクを見極めたり、多様なアセスメントができたりする分、広い視野で患者さんを看ることができるので、早期異常の発見ができています。私もこれから循環器での技術や知識を高めて、いつかは認定を取得したいと思っています。 竹村さん:
男性看護師が少しずつ増えてきていますが、皆、まじめで勉強家です。とにかく気持ちが優しくて、気が利きます。高齢女性には特に人気ですね(笑)。
カンファレンスをしていると、患者さんのために皆が熱くなるときに、男性看護師はクールだったりします。一方向に議論が向かっているときに、「こんな考え方はどうでしょうか」などと、新たな視点を広げてくれる発言をしてくれたりもします。
あと、この海老名、座間を職場に選んでよかったと思っています。首都圏の神奈川の一角ですが、程よく田舎で田んぼもあり、山も見えて緑もあり、ストレスの多い仕事をしているだけに、ちょっとほっとします。 相澤さん:
私も、海老名や綾瀬の田園風景がいいなと思います。夫と、こんな所に自宅を購入できたらいいねと話し、近くのJMAで働くことを決めました。
趣味で、「よさこい」をやっています。高知県の民謡で、鳴子を持って踊るものです。病院の中でもボランティアとして、患者さんの前で披露することがあります。そこで日ごろ、看護師として接している患者さんが、すごく楽しそうに、喜んでいる姿を目の当たりにして、逆に自分自身が患者さんの笑顔からパワーをたくさんもらいました。病を抱えながらも最期まで、その人らしく過ごせるように、レクリエーションを通して、楽しい時間を共有できるお手伝いができたらうれしいです。
今働いている病棟も、ターミナルの患者さんが6割くらいだったりします。そこの患者さんご本人やご家族から、「ここの病棟で最期を迎えられてよかった」と言われると、看護師をやっていてよかったと思います。
【お知らせ】
「スマイル・ホスピタル」(MORNING STEPS内)
毎週火曜日8:40~ 好評放送中!!(15年11月3日~16年3月29日)
このコーナーでは、JMAの看護師などが毎週、出演し、患者さんとの笑顔あふれるエピソード、仕事での心温まる話を紹介しています。
以下は、11月10日放送の竹村看護副部長の模様です。
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