日本医師会(日医)と四病院団体協議会(四病協)は10日、中央社会保険医療協議会(中医協)による2016年度診療報酬改定の答申を受けて、合同記者会見を行った。16年度改定では「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の基準が厳しくなったことから、病院経営や人員配置でどれくらいの影響があるのか、検証すべきとの声が相次いだ。【大戸豊】
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日医の横倉義武会長は、16年度診療報酬改定のポイントとして、(1)かかりつけ医のさらなる評価(2)在宅医療の推進(3)入院の機能分化(4)医療技術の評価(5)医薬品の適正使用-を挙げた。
在宅医療の推進に伴い、在宅医療専門の医療機関に関する評価が新設されたが、横倉会長は、かかりつけ医が並行して在宅医療を行う場合に、訪問するのが難しいような地域を、在宅医療専門の医師にバックアップしてもらうといった役割もあるとし、「地域包括ケアシステムを推進する中で、地域医師会と協力し、地域医療を守ってほしい」と述べた。
入院の機能分化については、看護必要度の見直しによる7対1の厳格化が進むとし、急激な変化による医療現場の混乱を避けるためにも、現場の影響をしっかり検証した上で、必要であれば次回改定を待たずに見直すべきと指摘した。
日医と四病協の記者会見では、看護必要度の厳しさを指摘する声が相次いだ
日本病院会(日病)の堺常雄会長は、今回示された7対1の看護必要度の基準が妥当かどうかは判断が難しく、早期の検証が必要とした。
また、病棟群単位による届け出は、日病が当初、病床機能区分が進められる中で、1つの病院を1つの機能だけで運営するのは難しいという考えから提案したもので、もともとの趣旨とは異なってきていることから、注意して見守る必要があるとした。
質疑応答では、今回の改定で7対1に残れる病院と残れない病院についての質問が出た。
堺会長は、病院の経営判断で7対1から10対1へ移ろうと思っても、そこで働く看護師のことを考えた場合、1年間でも完全に移れるかどうかは疑わしいとし、タイムラグを考慮する必要があるとした。
また、病棟群単位による届け出も、2年間の経過措置で判断するのは非常に難しいとしたほか、地域全体を見ても、看護師の需要動態が変わっていくなど、影響が大きいことを考えると、軽々しくは移行を判断できないと述べた。
全日本病院協会(全日病)の西澤寛俊会長は、看護必要度については、これまでも大病院と比べると、明らかに中小病院が基準を下回ることが多く、不利な状況があるとした。また、救急や外科を専門とする病院が有利な一方、内科中心の病院は厳しくなるとし、「内科は急性期ではない」とみなされることを懸念していると述べた。
大病院でも、病棟が診療科ごとに分かれている場合、基準である25%を大きく上回る病棟と、下回る病棟が出てくるとみられることから、西澤会長は「(看護必要度を)クリアしないところは本当に急性期ではないのかという検証が必要になる」としつつ、個人的には看護必要度を別の基準に変える必要があると思っていると述べた。
そして、10対1に移行しても、看護師をすぐに減らすことはできず、7対1の人員配置のままで10対1の収入では、病院は人件費を賄うことも危うくなるとした。
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