【株式会社MMオフィス代表取締役 工藤高】
■看護必要度新基準ライン25%をめぐる駆け引きに一喜一憂しても仕方ない
前回の拙稿「 看護必要度基準ハードルは政府のサジ加減? 」 において、2016年度診療報酬改定における「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)のハードル設定が、財務省マターの7対1病床削減というミッションの影響大であることを述べた。拙稿が掲載された翌日、全国自治体病院協議会(全自病)は14の会員病院を対象にした緊急調査の結果を公表したことがCBnewsに簡潔にまとめられていた(「 看護必要度の新基準で平均25%に届かず-全自病が緊急調査 」)。
14病院の中には、地域の急性期医療の基幹的な役割を果たしている自治体病院が多く見受けられた。にもかかわらず、25%のハードルは非常に厳しいという結果であった。もし、このシミュレーションが正しいならば、基準を満たせなかった基幹病院は「今の医療を続けながら10対1の看護師配置で医療を行いなさい」、もしくは「7対1の看護師配置で医療をするのは勝手だが、診療報酬は10対1の分しか得られません」ということになってしまう。減収となり、人件費という固定費はそのままなので、人件費比率が上がってますます経営状態が悪くなってしまう。当然ながら、そのような対応は現実的でない。
そこで多くの病院では前回拙稿のA病院のように、入退院調整の厳格化を検討したり、7対1算定病床数を減らしたりすることになるだろう。看護必要度のハードルが25%になった場合、多くの病院で甚大な影響が出ることは間違いない。だからといって、何%になるのかをブックメーカー的に予測し、それが当たったとしても、ハードルが下がるわけではない。それは点数が確定すれば分かることだ。必要なのは、ハードルが何%になろうとも病棟運営が継続できるように準備しておくことだろう。
今回は代表的な疾患別で看護必要度を深掘りしながら、看護必要度の高さは病床回転率の高さと正の相関関係にあることを説明したい。
■現場の経験・感覚に頼った病棟運営は通用しないのか?
看護必要度の項目については、昨年12月に示された見直し案に決まる可能性が高い=図=。この内容に基づき、前回はA病院の例を示しながら、病院の特性により改定の影響が大きく異なる可能性を述べた。
図 中医協総会で提示された看護必要度の見直し案
厚生労働省中医協総会資料(2015年12月9日開催)
グラフ1 A病院(300床台)の看護必要度シミュレーション(詳細)
MMオフィス独自資料
今回はより細かく疾患単位で見ることにより、疾患により看護必要度の評価が上がるものとそうでないものを示す。この結果を見ると、もはや感覚に頼った病棟運営は通用しなくなるかもしれない。これが良いことか悪いことかは正直分からない。7対1入院基本料を安定的に算定し続けるためには、経験・感覚に加え、データに基づく定量的な情報把握が必要であり、改定によってその重要性が増すことに疑いの余地はないだろう。
次回配信は2月3日5:00を予定しています
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