【株式会社MMオフィス代表取締役 工藤高】
連載では何度か疾患別の「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)や入院日からの経過に応じた看護必要度の充足状況の推移等を示しながら、現行制度において「評価される/されない」患者像を明確にしてきた。評価されていない代表例として、A項目(モニタリング及び処置等)のみが高く、B項目(患者の状況等、ADL項目)が基準を満たさないような、がん患者や術後の患者が挙げられる。これらの患者の中には、看護師の業務負担が非常に重い患者も一定数含まれている。
同じく評価されていないB項目のみを満たす患者は、少なからず看護師の負担となっているものの、国家資格を要する看護師を重点的に配置する必要性があるかは疑わしい。介護中心ならば、看護補助者で代替が利くからだ。
脳梗塞で救急搬送されてきて一定期間経過し、病態が安定し、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟へ転棟する前段階にあるような患者像を想像してもらいたい。注射や採血といった、看護師の国家資格がなければできない業務に関する負担はかなり低くなっているに違いない。
このような現行制度の矛盾点は、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」で、昨年8月に中間とりまとめ(案)が出された時点で、ほぼまとめられていた。
図1 現行の看護必要度で評価されていない「高負担な患者像」
厚生労働省中医協総会資料(2015年12月9日開催)より(図2と3も同様)
このとりまとめ内容に基づいた見直しの考え方が、昨年12月9日の中医協総会で示された=図2=。
図2 看護必要度の見直し案
術後の患者を「M項目・M得点」とした点が目新しいが、入院医療等の調査・評価分科会で夏に議論されていた内容が踏襲されており、この見直し案自体にさほど驚きはなかった。また、救急車搬送入院患者と術後患者という「急性期本来の評価されるべき患者」が評価されるためのものであり、異論はない。
■看護必要度は7対1病床の削減目的で利用される指標に
ただし問題は、新しい評価項目になったときのハードル設定だ。7対1入院基本料の算定における看護必要度の基準は現行15%以上だ。これに対し、若干の項目の追加・削除はあるが、「A項目3点以上」と「M項目1点」が追加になるのだから、当然ながらハードルは15%より高くなる。
では、一体いくらにするのが適切なのだろうか。本来であれば、患者像に応じた看護師の業務量などの緻密な計算がなされるべきである。
【訂正】
2015年11月11日掲載の当連載「DPC病床稼働率優先経営へのトラップ拡大」に誤りがありました。
本文3パラ目「つまり、入院期間Ⅲの点数よりも自院出来高平均点数が低い場合は、そちらで請求することになっている。出来高点数が低い患者について、入院期間Ⅲ包括点数狙いのロングステイ的な病床稼働率優先経営はできないわけだ」を、「つまり、入院期間Ⅲの現行の入院期間Ⅱマイナス15%点数よりも出来高平均点数(医療資源投入量)が低い場合は、そちらで請求することになっている。入院期間Ⅲ包括点数狙いのロングステイ的な病床稼働率優先経営はできないわけだ」に訂正しました。
次回配信は1月20日5:00を予定しています
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