【神奈川県立足柄上病院副院長　玉井拙夫】

　総合診療医とは病気を心身から全体的に診療する医師であり、地域における予防医学や健康教育に従事する医師であることには異論はないだろう。プライマリーケアを担当する医師であるが、その立ち位置（役割）はさまざまである。
　英国においてはGeneral Practitioner（GP）とよばれ、National Health Service（NHS）の一次医療機関として位置付けられており、原則としてGPの指示なしでは専門医療機関を受診できない仕組みである。保険制度の違いはともかく、米国やドイツでも同様である。

　我が国における問題は、「家庭医」や「かかりつけ医」等の開業医（一次医療機関）の役割が必ずしも明確ではないことから、腹痛、発熱などの症状で大学病院などの高度医療機関に直接受診することができ、実際にそのような患者も存在することだ。さらに、総合診療医の育成が遅れたことも医療提供体制にひずみを生じさせたのではないか。
　今回は足柄上地域での総合診療医の役割と、その育成を通じて足柄上病院が何を目指しているのかについて述べる。

（残り1593字 / 全2066字）