【京大大学院教授(健康情報学分野) 中山健夫】
これまで、ビッグデータが注目されている背景についてお話ししてきました。それでは、実際にデータを数多く集めて、医療の中で見えてくるものとは何なのでしょうか? わたしたちは、そこからどんな意味のある情報を手にできるのでしょうか?
近年、脳ドックの普及で偶然見つかることが多くなってきた「未破裂脳動脈瘤」(以下、脳動脈瘤)について考えてみましょう。
脳動脈瘤が破裂すれば、致命率の高いくも膜下出血となることはご存知の通りです。そのため、脳動脈瘤が見つかったら、予防的に開頭手術によるクリッピングや、コイル塞栓術という血管カテーテル治療が行われることが少なくありません。
ただ、これらの予防的な治療をするかどうかの判断は容易ではありません。そもそも脳動脈瘤は本当に破裂するのか。するとしたら、どれくらいの確率(リスク)なのか-。治療方針を決めるために欠かせない情報にもかかわらず、これまで信頼できるデータがあったとは言えませんでした。
現場では、それぞれの臨床医が苦労しながら、時にはかなり大胆な(?)数字で患者さんに説明をしていた、せざるを得なかったのです。患者さんも、せめて破裂率が50%より、かなり少ないのか、それとも多いのか、手掛かりになる数字を知りたいと希望するのは当然です(もちろん一番知りたいのは、「自分の脳動脈瘤は放っておいてよいのか、早く治療した方がよいのか」ではありますが-)。
(次回配信は6月5日5:00を予定しています)
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