【京大大学院教授(健康情報学分野) 中山健夫】
いわゆる「ビッグデータ」が意味するのは、もちろん医療に関係するデータだけではありません。医療関係のデータは、むしろビッグデータのごく一部です。医療分野の話に進む前に、世の中にある「データ」がどのようにして「ビッグデータ」に変わってきたか、特にインターネットの世界で起こったことを中心に、その経緯を概観しておきましょう。
「データ」の爆発的な増加は、インターネットの世界でいわゆる「Web2.0」時代が始まった2005年ごろから顕著になりました。その背景の一つには、インターネット上に流通するコンテンツ作成が容易になり、普通の人々によるブログ、掲示板、写真や動画の投稿サイトなどが相次いで提供されるようになったことがあります。Web2.0時代は、ユーザーや消費者自身が情報をつくり出し、発信する新しい”Consumer Generated Contents”時代の到来でもありました。
しかし、こうした「にわかコンテンツ・クリエイター」の発信する情報は、それ以前の「Web1.0」時代にプロがつくっていたものとは異なり、文字通り「玉石混交」です。インターネット上の情報量が飛躍的に増えたのはいいのだけれど、どこに信頼に足る有用な情報、自分が求める情報があるかが分かりません。一部の情報学者は、この状況を”DRIP”、すなわち”Data Rich Information Poor”と呼びました。
(次回配信は5月29日5:00を予定しています)
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