【株式会社スターコンサルティンググループ代表取締役 経営コンサルタント 糠谷和弘】
前回は、①少子化②医療から介護へ③看取りの場の変化-という、医療・介護環境を取り巻く3つのキーワードから、「多くの医療機関は高齢者住宅事業に参入すべき」ということを説明しました。しかし、こうした外部環境の変化だけで、医療機関の皆様に“高齢者住宅事業への参入”をお勧めするわけではありません。医療機関だからこそのメリットも大きいと言えるのです。
①医療ニーズ保持者の受け皿になれる
社会福祉法人や株式会社などの事業者が運営する特別養護老人ホーム(特養)、高齢者施設の多くは、医療ニーズを持つ患者の受け入れに消極的 です。あるデータによると、「経鼻経管栄養」の患者は33.5%のホームが、「気管切開」の患者になると74.4%のホームが、「まったく受け入れていない」ということでした(医療経済研究機構「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査【介護保険施設】」、2011年)。手厚い人員配置が義務づけられている特養や「介護付き有料老人ホーム」ですら、看護師は数名しか配置されていません。外部からの訪問看護によるサポートだけでは、現実的に受け入れが難しいのです。
病院を退院後、行き場を見つけられずに「医療難民」「介護難民」と呼ばれる方が増えている背景は、ここにあります。
その点、医療機関が運営するならば、こうした方々のサポートについては、専門性が発揮できます。また、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、特養や介護付き有料老人ホームと違って、明確な人員基準がありませんから、入居者の必要とするサービスを自由に組み合わせることができます。こうした制度を活用し、 医療ニーズ保持者に特化したホーム(以下、「 医療特化型ホーム 」)を立ち上げ、訪問介護、訪問看護などのサービスを組み合わせれば、多くの患者の受け皿となりうる のです。
(次回の記事配信は4月15日15:00を予定しています)
(残り2326字 / 全3174字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】