【北里大医学部新世紀医療開発センター准教授 佐々木治一郎】
Ⅳ期肺腺がんと診断されてから既に3年を経過して、その患者さんは、わたしの外来を受診された。初回治療に分子標的薬が使用され、画像上ほとんど腫瘍が見えなくなるほど奏効し、一度も入院することなく前医で治療を受けていたが、残念なことに分子標的治療抵抗性となり、腫瘍の再増大を認めたため、2次治療目的にわたしの外来を紹介されたのである。
抗がん剤による2次治療を外来でスタートし、奏効と再燃を繰り返しながら、さらに3年が経過し、6種類目の抗がん剤治療が無効となったころ、脳に転移が見つかった。ふらつきの自覚症状があり、全脳照射治療(放射線治療)の方針となったため、入院を勧めたが、やはり通院での治療を希望し、実際にその治療も見事、通院で完遂された。
そうして、7種類目の抗がん剤治療を開始して間もなくのことだった。わたしは、化学療法室の看護スタッフから「彼女の様子がおかしい」との報告を受けた。
(次回の記事配信は2月13日15:00を予定しています)
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