【北里大医学部新世紀医療開発センター准教授 佐々木治一郎】
60代のその女性患者さんは、健康診断の胸部レントゲン検査で異常陰影を指摘され、精密検査のため、わたしの外来を受診した。肺の陰影は2センチにも満たないが、気管支内視鏡検査で肺腺がんと診断された。わたしは、CT画像上は早期がんの可能性が高いと考え、手術を含めた根治治療のお話をしながら病期診断を進めていった。
「残念ですがあなたの肺がんは、手術などで完治することが難しい最も進んだ状態であるⅣ期でした」
しばらくの沈黙の後、患者さんは取り乱すことなく、こう質問された。
「そうですか・・・。ところで、先生、あとどのくらい生きられるでしょうか?」
身体の不自由なご主人との2人暮らしで、その後のご主人の生活を心配されてのご質問なのだろうか? その当時、仕事を持たない70歳近くの女性の患者さんで、予後告知を希望される方は非常に少なかったので、わたしはどうして予後を聞きたいのか尋ねてみた。
(次回の記事配信は2月6日15:00を予定しています)
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