【埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教授 大西秀樹】
埼玉医科大学国際医療センターは2007年4月に開院し、「患者中心主義のもと安心で安全な満足度の高い医療の提供を行い、かつ最も高度の医療水準を維持する」を基本理念とし、最高水準の医療を提供している病院である。
がん医療に関しては、わが国の大学病院における初の包括的がんセンターとして、がん医療の在り方を提示し続けている。
また、がん患者の心のケアを専門に担当する「精神腫瘍科」は、大学病院で初めて設けられた。診療分野としては、患者の診療のみならず、家族を診察する「家族外来」、遺族を診察する「遺族外来」を開設し、がんという疾患を経験したことで生じた苦悩の中にある方々に対応する体制をつくり上げてきた。
本稿では「遺族外来」の設置から現状に至るまでについて述べてみたい。
以前、横浜市立大病院に勤務していたころ、がん患者の診察時に付き添っている妻が抑うつ的だと気付き、家族の診療を始めた。その後、1996年に同院で自然発生的な形で「家族外来」をつくった。こうして家族の診察を続けていると患者が亡くなり、家族が遺族となることもあった。遺族になっても診療を続けるのは当然のことである。こうして遺族外来も同年に開設した。遺族外来の成立は医療を行うに当たり、必要だと思ったことを積み重ねてきただけである1)。
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