【済生会吹田病院事務長 宮部剛実】
最初の経営合宿は2009年1月に開催した。土曜日の午後2時に始まり、翌日曜の午後1時に終了した。
運営管理会議(トップマネジメントを行う「経営管理会」の下部組織。経営課題を審議する)のメンバーを中心に、院長以下24人が参加した。
プログラムは、以下となった。
○これまでの経営戦略について
○医療環境分析・経営分析について
○DPCから見た当院の位置付け
○ワークショップについて
○参加者による自己紹介
○2009年度の基本方針についての現状分析(課題の抽出)
○取り組み課題(目標)・成果指標の設定、発表資料作成・発表
事前に診療統計、財務・経理統計などが配布された
合宿を行うに当たって、院長が方針を述べた。
「診療(医療の質の向上、経営改善)に関し、合宿で議論すべき事項について、各部署が何をすべきか(何を改善すべきか、そのためには何が必要か)を考えること」
最初の合宿は、危機感も強い上に、力の加減も分からなかった。土曜は深夜の議論となり、取りまとめ案ができたのは、翌日曜日の午前3時過ぎ。合宿で取りまとめた目標・行動計画案は、経営企画室が整理した上で、次年度の正式な目標となった。
この時に、現在も続く経営合宿の原形ができた。
■大切なのは、危機意識と当事者意識
合宿の流れを紹介する。
まず、合宿の目的を確認し、過去と現在の状況を振り返る。ここでは、内部環境と外部環境の分析を行う。
外部環境分析の対象は、医療政策の動向と診療圏内の変化である。内部環境分析では、今年度の目標達成の状況、診療成績や財務成績などである。
外部環境分析については、現在外部講師を招いているが、2回目までは経営企画室が分析を行った。
病院内外の情報を把握し、グループワークを通じて次年度以降の課題整理、目標値、成果指標、そして行動計画の素案を作っていく。グループワークは、KJ法、SWOT分析、ワールドカフェなどを通じて進める。
合宿後、経営企画室が最終案を整理し、次年度の予算編成との整合性を図る。
目標設定や課題解決に向けて幹部が合宿をすることは、一般企業では珍しくないと聞く。病院でも少なからず行われていると思うが、当院の合宿は、他の病院の事例を参考にしたわけではなく、全くのオリジナルである。形式は他の合宿と似ているかもしれないが、より大切なのは、参加者の危機意識と当事者意識の高さではないか。
ゴールを明確にしていれば、衆知を集めることによって、実行するためのプロセスはおのずと決まってくるように思う。細かく情報収集してから行動を起こすよりも、「まずはやってみよう」という行動も時には必要である。当院の経営合宿はこのように始まったのである。
(残り1288字 / 全2414字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】