【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
特定機能病院は、1993年の第二次医療法改正で高度医療の提供や高度の医療技術の開発、高度の医療に関する研修を実施する能力などを備えた施設として制度化され、現在88病院が承認されている。当初は大学病院本院やナショナルセンターを中心に承認されていた。現在は静岡県立がんセンター、愛知県立がんセンター、聖路加国際病院なども加わる一方で、大学病院本院であっても承認を受けていない施設もある。
医育機関の代表であるこの特定機能病院の在り方は、日本の医療の未来に大きな影響を与え、その位置付けは大切である。ただ、一方で財務状況は極めて厳しく、補助金をさらに投入しない限り存続が危ぶまれる病院も出てくるだろう。連載第209回でも医療経済実態調査を取り上げたが、再度、特定機能病院に焦点を当て、この窮状を明らかにし、今後の在り方について私見を交えて論じる。
表は、病院機能別の収支状況であり、損益差額がいわゆる医業収支に近い、補助金等を含まない財務的な業績を示している。なお、病院全体は3分の1のサンプル抽出だが、特定機能病院は全ての施設が調査対象であり、実態そのものが明らかになっている。
2013年から100床当たり医業収益は伸び続けているが、赤字幅は拡大している。その代表的な理由は、医薬品費比率の上昇で、増収だが、それ以上に費用がかさみ減益というトレンドにある。グラフ1は、13年を基準に、特定機能病院の各項目の伸び率を見たものである。コロナ禍の20年度を除き、医業収益は増加しているが、医薬品費は20年度でも減少することはなかった。
これは外来化学療法やCART療法が増加し、対象が拡大されることによる影響である。今後もこの傾向は続くことが予想される。14年度はコロナ前では業績が最も悪かったが、これは消費税が8%になったタイミングであり、その後、特定機能病院においては4割の補填漏れがあることが明らかになった=資料=。
当時の850床の千葉大学病院の試算では
(残り2058字 / 全2924字)
次回配信は6月21日を予定しています
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】
【関連キーワード】